2024年11月24日(日)

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

2019年7月13日

「公」のために戦った香港の人々

 香港の人々は自由と司法の独立のために戦った。1997年に英国から返還されて以来、少なくとも50年は「一国二制度」のもとで自由が保証されるはずだった。しかし、その繁栄は年を追うごとに中国による締め付けで空手形となり、今や自由や民主、人権が大きく阻害される事態となっている。

 今回問題となっている「逃犯条例」だが、これは外国人だからといって例外ではない。日本人が香港の風景を写真におさめようと、カメラを向けた瞬間、「軍事施設を撮影しましたね」「スパイ行為にあたる」と拘束される事態が起きないと誰が言えるだろう。いったん拘束されたが最後、中国に送致されて中国側の描いたストーリーに則っていわば「人質」にされるのである。

 伊藤忠商事の社員が拘束されいまだに釈放されていないことや、温泉調査を行っていた地質調査会社の社員が「中国の国家機密を窃取し国外に違法に提供した罪」として懲役15年の実刑判決(加えて罰金)を言い渡されたニュースが、まさに香港を訪れる日本人の身に降りかかる可能性さえあるのだ。「中国の国家機密を窃取し国外に違法に提供した罪」と言っても、中国の刑法111条には国家機密が何たるかの例示列挙さえない。つまり、何が罪になるかを決めるのは中国自身だ。まさに「非法治国家」の恐ろしさである。

 電車を待っているとき、ショッピングに夢中になっているとき、あなたのリュックのポケットに禁止薬物の入った袋をそっと放り込むことはたやすいだろう。街角で「ちょっと見せてくださいね、これは何ですか」でもはや人生が終わりだ。あなたは「知らない、私のではない」と言うだろう。「捕まるとみんなそう言うんですよ」と返され、中国での裁判を待つ身となる。

 そうした状況が刻一刻と近づいていることを香港の人々は敏感に感じ取ったのだろう。この「逃犯条例」改正を通してはならないと立ち上がった。まさに自由や司法の独立といった「公」のためである。流血や暴力などの惨事もあったが、結果的に香港行政のトップである林鄭月娥氏は条例改正の延期を表明した。ただ、香港の人々は「完全撤回」を求め、この原稿を書いている7月11日現在でもデモを続けている。


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