2022年12月5日(月)

名門校、未来への学び

2019年10月13日

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鈴木隆祐 (すずき・りゅうすけ)

ジャーナリスト

1966年長野県生まれ。法政大学文学部在学中より出版社で雑誌編集を始め、その後フリーに。著書に『名門高校人脈』(光文社新書)、『名門高校 青春グルメ』(辰巳出版)ほか。

偶然は必然?強運に恵まれた僕の人生

 「家業を継ぎ医者に…、を考えなくもなかったんです。でも、ある時父に『なんで医者になるのか』と訊かれ、『豊かな生活が送れるから』と答えたら、『ならばやめろ』とキッパリ言われました。人の命を預かる責任を持てない、と思われたんでしょう」。父の信さんは病院を継がせたい意志もあったはずなのに、その後も長坂さんの選択をつねに支持し、経済的な支援も続けた。

 「実は父も本当は医者志望ではなく東大文学部の美学科進学を目指していました。家業を継がせるか、息子の意志を尊重するのか.. 自身の経験からそのプレッシャーとずっと戦ってきたんだと思います。僕の人生にはたまたまが多すぎるんです。夢とか目標とか、言葉では言えても、なかなかその通りには実現できない。自分をプロデュースするのが一番難しいですね(笑)」

 本誌で主に紹介したのは岡高コーラス部の活動。50年以上も顧問を務める、現在は嘱託の近藤惠子元教諭のカリスマ性が牽引力となり、何世代に渡って、いくつものコンクールで入賞を遂げてきた。

 「首都圏段戸会という、東京での同窓会があって参加したら、卒業以来惠子先生にもお目にかかりました。『僕のこと覚えてますか?』と尋ねると、『忘れるわけないじゃない』って返事が(笑)。音楽の授業の最後、歌唱テストがあるんですが、そこで『愛の讃歌』を歌い上げちゃいましたからね」

 この逸話を聞いて、パワフルな惠子先生の半生が長坂さんプロデュースにより、映画やドラマで描かれたら、さぞや面白かろうと思った次第。時代は70年代初頭、主役は転校生の異端児、往時の長坂少年ではいかがだろう?

筆者写真=鈴木隆祐、校舎写真=松沢雅彦

長坂信人(ながさかのぶひと)
1957年愛知県岡崎市生まれ。94年より、映像制作会社(株)オフィスクレッシェンド代表取締役/CEOを務める。同社の主な所属監督は、堤幸彦、大根仁、平川雄一朗。演出家、プロデューサー、作家など総勢70名を抱える。同社及び所属クリエイターが手掛けた作品は、『クイズ赤恥青恥』『金田一少年の事件簿』『ケイゾク』『TRICK』『ピカンチ』『20世紀少年』『SPEC』『イニシエーション・ラブ』『モテキ』『バクマン。』『SCOOP! 』『ROOKIES』『JIN-仁-』『僕だけがいない街』『世界一難しい恋』『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』など多数。ドラマ、映画をはじめ、ミュージックビデオ、ライブDVD、舞台映像等、多岐にわたり作品を生み出している。

 日本を代表する名門高校はイノベーションの最高のサンプルだ。伝統をバネにして絶えず再生を繰り返している。1世紀にも及ぶ蓄積された教えと学びのスキル、課外活動から生ずるエンパワーメント、校外にも構築される文化資本、なにより輩出する人材の豊富さ…。本物の名門はステータスに奢らず、それらすべてを肥やしに邁進を続ける。

 学校とは単に生徒の学力を担保する場ではない。どうして名門と称される学校は逸材を輩出し続けるのか? Wedge本誌では、連載「名門校、未来への学び」において、名門高校の現在の姿に密着し、その魅力・実力を立体的に伝えている。だから、ここでは登場校のOB・OGに登場願い、当時の思い出や今に繋がるエッセンスを語ってもらおう。

 現在発売中のWedge10月号では、現在の愛知県立岡崎高校のコーラス部に迫ります。

  
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◆Wedge2019年10月号より

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