純粋なバレーファンならば、あまりにもバレーボールの戦いとはかけ離れた同局の〝ショーアップ中継〟に辟易(へきえき)している人も少なくないだろう。その筆頭はジャニーズ事務所所属のタレントが大会スペシャルサポーターとなり、過剰な盛り上げ役に徹していることだ。
1995年大会でデビュー直後のV6がサポーターに就任して以来、ここまでバレーボールW杯中継におけるフジテレビとジャニーズ事務所の蜜月関係は継続されている。今大会もジャニーズWESTが就任。中継のある日本戦の試合前に歌を披露し、セットの間にはコートに入って日本を応援するように観客席を煽る。そして試合が始まると観客席でオーバージェスチャーやアジテーションとともに日本の応援を繰り返す――。これが毎大会でサポーターを務めるジャニタレのルーチンワークだ。
「これはスポーツなんかじゃない。日本のショーだ」
会場には〝ジャニタレ目当て〟のファンも大挙して来場するようになっている。試合中にDJが「ニッポン、ニッポン」を連呼し、まるでコンサート会場のようなノリになる応援に困惑する他国代表チームも数多い。いくらホームでも「やり過ぎだ」という批判が絶えないのは関係者ならば誰でも知っている。今に始まった話ではないが、こうした過剰演出には過去にW杯参加国から「これはスポーツなんかじゃない。日本のショーだ」とクレームがつけられた例もあり、こうした例は表に出ない類のものも含めれば枚挙にいとまがない。
せっかくの熱い戦いに過剰演出が水を差してしまう。だからW杯なのに緊迫感がなくなり、どこかチャラい感じの戦いに映ってしまうのは残念なことだが否めない。取材を重ねていても「ジャニーズ中心になりがちの中継を変えられないのか」という声は、もう決まり文句のように方々から聞こえて来る。ところが、そう簡単にいかないのが現状のようだ。事情通は、こう打ち明ける。
「FIVB(世界バレーボール連盟)が、ずっとW杯の日本開催を継続させているのは数十億円とも言われる莫大な放映権料が入るから。フジテレビも視聴率がとれるキラーコンテンツとして巨額の放映権料を惜しみなく支払ってきている。だからこそジャニーズとの関係は切っても切り離せない。ジャニーズのタレントを起用することでチケットやグッズ収益が増え、何よりもスポンサーが数多く集まるからだ。
昨年の世界選手権・日本大会を日本バレーボール協会と共催し、放送権を得たTBSは〝ジャニーズに頼らない運営〟を行ったところスポンサーが集まらず約10億円もの大赤字を抱え込んだ。日本協会側も観客が集まらず6億円の赤字を生んだのは業界内でも有名な話。ジャニーズファンがいなければ、バレー人気は成り立たないというのが放映するテレビ局側の考えだ」
しかしながらバレーボール国際大会の開催権を日本が独占している時代にも終焉が近付きつつある。前出の世界選手権は2022年の次回大会でオランダとポーランドの共催で開かれることが決定。1988年から2018年まで6大会中4大会を国内開催していた日本も立候補していたが、予算編成で難航を強いられ、あっさりと招致に失敗した。
さらにはW杯も2023年大会から公募で開催国を決めることになっている。中国も立候補すると見られており、日本協会側はチャイナマネーの脅威を警戒しながら「いよいよ開催権を奪われるのでは」と危機感を強めている。フジテレビも今大会中継の視聴率に苦しんでいることから〝ジャニタレ頼み〟にも限界があるようだ。
大きく盛り上がるラグビー熱とは対照的に日本のバレーボール界は方向転換を図らねばならない過渡期に直面しようとしている。
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