2024年7月16日(火)

オモロイ社長、オモロイ会社

2019年10月29日

起業への決心〜事業開発が軌道にのるまで

 充実していたDeNAでの社員時代、「やりたいこと」ってなんだろうと考えるようになったそうです。仕事への不満は無いものの、向き合う事業を成長させていく経験を積んでいく中で、今の仕事が一生やりたいことではないことにも気付きはじめ、社会人4年目に入った頃から「社外」へ目を向けるようになり、異業種交流会に参加するうちに、ある出会いから「農業」という軸が現れはじめたそうです。

 小さい頃に身近であった農業に社会人となっていろんな観点で深堀りし、研究してみると非常にオモシロイと感じるようになっていったそうです。生産、流通に課題が山積であること、「何十年も前から古い体質が変わっていない」、「課題が明確なのに解決が進んでいない」、「課題解消までのハードルが高そう」と、次々に目の前に明確となっていくこの産業の問題点を放っておけない、自分がやるべきと思うようになっていったと話します。

 ただ仕事には充実感もあり、週末起業で当初は考えたものの、自身が器用な方でないこと、「やらない理由」を並べ始めるとどんそれが増殖していく、「周りの人々に迷惑をかけてしまう」、「今がタイミングではない」等々、その時に起業をしている知人から言われた「やらない理由は増えていくから、今やらないなら一生やらないよ」という一言で退職を決意したそうです。

 起業にあたって大切にしたことについて秋元さんは、ビジョン(想いの強さ)をキチンと据えることだったそうです。自身が駆け引きがうまくない、好きではない、事業を進めていく上で、とにかく想いを強く伝える、損得ではなくいかに共感してもらえるか? 長期的な目線で関係性深い人々が集い、事業発展が継続できるように。

 そこで生まれた事業ビジョンが「こだわりが”正当に評価される”世界を作る」というものでした。「30年前に1932万人いた農家は340万人まで減少しています。農家の平均年齢は67歳で、なかなか農業従事者の減少は止まりません(※同社調べ)。農業を魅力的な産業にするためにはまず「正当に評価される」仕組みづくりが必要不可欠だと私たちは考えています」と設定しています。

 小規模農家の所得の低さに課題、しかし実際に農家を訪ねると、高齢化もさることながら、考え方の異なる生産者の現状把握をしながら課題の大きさに気付いた秋元さん、もう一方の消費者についても現状把握に努めたそうです。

 それが子育て世代の食品への投資の現状、上記資料のとおり食品へのこだわりが浮き彫りに。この生産者、消費者の個性を大切しながら双方の個人同士が繋がる世界観を目指して、2017年8月にサービスを開始したのが、「食べチョク」(こだわり食材のマーケットプレイス)です。「このサービスのプロダクトコンセプトは、こだわった食材をつくっている生産者が『既存の流通では、こだわりが価格に反映されない』という課題を購入者に直接販売できるプラットフォームによって解決するサービスです」と定義しています。

 これは都会でも人気の「ファーマーズマーケット」の世界観をWEB上で実現するサービスとなっています。消費者側も好きな生産者から商品を購入でき、購入後に感想を生産者に伝えられるコミュニティ機能も備わっています。

メリットは何か?

 ユーザー側は、中間流通を無くしている関係で、新鮮で美味しい作物が手に入る、珍しい野菜、訳アリ品も買える生産者と直接繋がることでストーリーが生まれていきます。

 生産者側は、中間マージンを排除している関係で、利益率が高い、自分の農園名でブランディングができる、これは言い換えれば、直接顧客を持つこと、顔の見える環境がここにはあること、リピーター化しやすくなっています。

 順調に事業も推移し、現在はこだわり生産者が500を超えるほど集うようになってきました。月間50〜60の生産者から問い合わせがあり、生産者、消費者を結ぶプラットフォーマーの位置付けを確固たるものになりつつあります。

 秋元さんには、起業して3年を振り返っての感想を語っていただきました。

 「3年前、なんのコネクションもなく、ただただ農業への想いだけで立ち上げた会社ですが、振り返るとたくさんの生産者さん・メンバーが協力してくれる状態になりました。とても嬉しく、大変ありがたいことだと思っています。

 一方で、当初思い描いていたことの1%も達成できていません。まだまだやるべきことがたくさんあります。

 こうしている間にも、貢献できるはずだった生産者さんが廃業を決めていく。一人でも多くの生産者さんに貢献するために、4期目はさらにスピードアップし事業を展開していきたいと思っています」


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