2024年11月22日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年10月21日

失業が生じなければ個人消費は落ち込まない

 景気の波が大きくなるのは、「景気が悪くなると倒産が増えて失業が増えて失業者が物を買わなくなるから個人消費が落ち込む」というメカニズムによるのです。

 たとえばリーマン・ショックの時には、輸出企業が労働者を解雇したので、解雇されて収入が得られなくなった人々が消費を減らし、それが景気を一層悪化させた、というわけです。

 しかし、労働力不足の時代になると、製造業を解雇された労働者は、飲食業等々がよろこんで雇ってくれるので、失業することも収入を失うこともありません。そうなれば、個人消費は落ち込まずに済むわけです。

製造業に労働力が回せない

 バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済の最大の問題は失業でした。輸出が減ると失業が増えてしまうので、輸出は極めて重要だったのです。しかし、労働力不足の時代になり、状況は変わりました。

 輸出企業が労働力不足で十分な物を作れない時代が来るかもしれません。労働集約的な生産ラインはすでに途上国に移っていますが、その流れは加速して行くでしょう。

 これまでは、「海外の不況で注文が減ったから輸出が減った」ということでしたが、今後は「労働力不足で十分な品物が作れない。したがって、海外からの注文が増えても減っても生産量も雇用も増やせない」という時代に近づいて行くのかもしれません。

 「現役世代は、介護や医療に加え、国内で消費される物を作るので精一杯だから、最低限輸入に必要な外貨を稼ぐだけの輸出は行なって欲しいが、それ以上の輸出は不要」というイメージですね。

 もちろん、政府が経済計画で輸出量を調整するわけではありませんが、輸出企業にとっても、海外の景気の変動によって輸出数量が増減するより、海外の景気にかかわらず一定量の輸出を続けるという方が望ましいかもしれません。

 海外が好況の時に無理をして生産量を増やしても、海外が不況になれば減らさざるを得ないのであれば、最初から無理をしない、ということでしょう。

 そうなると、生産設備の投資も安定するでしょう。淡々と同じ量を生産し続けるだけなら、設備量も一定(あるいは決められたペースで増えて行く)でしょうから。


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