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2019年11月7日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

バブルに沸く日本語学校業界

 「留学生30万人計画」によって、日本語学校業界はバブルに沸いている。学校数は近年急増していて、大学をも上回る約750校を数えるまでになった。そのなかで、“偽装留学生”の受け入れを頑なに拒んでいる学校など、ごく一部に過ぎないことは筆者の取材経験から断言できる。

 「学び・稼ぐプログラム」のブータン人留学生を受け入れた日本語学校は、九州から東北まで全国20以上に及ぶ。いずれも学校も、ブータン人たちが母国から仕送りなど受けられず、しかも借金漬けであると知っていた。つまり、留学生たちが日本で留学生活を続けるためには、違法就労するしか選択肢がないと理解したうえで、彼らの入学を認めている。

強制送還を請け負うビジネスまで登場

 その揚げ句、留学生のビザが更新不許可となった途端、自らの立場を守るため、彼らを母国へと強制送還してしまう。しかも、いくら手荒なやり方が取られようと、世には全く知られない。最近では、日本語学校に代わって留学生の強制送還を請け負うビジネスまで登場しているというのに、何も問題にはなってないのだ。

 法務省出入国在留管理庁は、日本語学校の運営基準「厳格化」に乗り出した。そこで強調されているのは、留学生に対する管理の強化だ。この方針によって、日本語学校による留学生の強制送還は、今後さらに増える可能性がある。留学生が不法残留となる前に日本語学校が動いてくれるなら、法務省にとっては好都合かもしれない。とはいえ、借金を背負ったまま母国へと送り返される留学生はたまらない。

 タンディン君が強制送還される現場に立ち会ったダワ君は言う。

 「タンディンの声はショックで震えていました。だけど、抵抗もせず、アパートから出て行った。日本語学校の職員たちに取り囲まれていたので、どうすることもできなかったんでしょう」

 夢と希望を抱いてやってきた留学が、強制送還で終わってしまった。タンディン君は日本で都合よく利用され、使い捨てられたのだ。さぞや悔しかったことだろう。

 一方、ダワ君もまた、2カ月後の9月に日本から去っていく。やはり留学ビザの更新が不許可になってのことである。

1回目『日本人が目を向けない「消えた留学生」の深層』
2回目『政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち』

  
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