2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2019年10月31日

 ボリビアで10月20日に行われた大統領選挙の結果が確定した。モラレス大統領の四選が決まり、さらにもう一期、5年、政権を担うこととなった。しかし、ここに至るまで国内は騒然とした。否、今なお、結果を不服とする反政府勢力がラパス市内に繰り出し一帯はただならぬ雰囲気が立ち込める。米州機構(OAS)、EU等、国際社会は決選投票実施の上、改めて国民の信を問うべきだ、とする。

26日モラレス大統領に抗議するラパス市民(REUTERS/AFLO)

 現地時間24日、最高選挙裁判所が発表したところでは、開票率99.9%、モラレス氏47.08%で、対する元大統領のメサ氏36.50%だった。問題となったのはこの両者の票差だ。

 大統領選挙規則によれば、第一回投票で、第一位候補者が40%以上を得票し、かつ、第二位候補者との間に10ポイント以上の差がある時、決選投票を行わず選挙結果が確定する。

 メサ氏にとり、決選投票に持ち込めるか否かが決定的であるのは、決選投票になれば野党勢力を糾合しモラレス氏に勝利する可能性が大きいと見られているからだ。

 20日の時点で、開票作業未了ながら決選投票必至との見方が大勢だった。ところが、ここで急に開票作業が中止される。一日たった翌21日夕刻、開票作業は再開されたが、残りの開票が進むうち、急遽情勢が一転、選挙は第一回投票で決着、決選投票なしとされた。一体、丸一日もの間、何があったのか、そもそもどうして開票作業が中止されたのか。国民の疑念が高まっていく。メサ氏側は当然、不正操作があった、選挙は無効だ、と声を上げての抗議だ。OASが、23日の段階で早くも、状況微妙なため決選投票にて最終結果を確定すべし、と主張した背景には、この開票作業を巡る一日の空白があった。

 ボリビアは、国の富を独占する白人層と、貧困の中に暮らす先住民との間に言い難い社会の溝を抱える。国は1982年、民政に移行したが、その後進められた経済の自由化はかえって格差を拡大、貧困層がますます貧困化するとの悪循環にはまっていった。政権は白人層の独占だ。先住民側は政府に不満をぶつけ、時に暴動を起こし、自らの主張を訴えていくしかなかった。ところがこれが時に奏功する。

 2003年、経済の窮状を打開すべく、政府は天然ガスの対米輸出を推進。しかし、これが先住民側の怒りを買う。ガスはボリビアのものだ。米国に売り渡し、代金を白人層が懐に入れるのは許されない。国内騒然とする中、時のサンチェス・デ・ロサダ大統領は辞任に追い込まれていった。代わってカルロス・メサ副大統領が大統領に昇格。今回、モラレス氏と接戦を演じた人物だ。

 しかし、メサ大統領も長くは続かない。国内の西部地域と東部地域が対立したのだ。西部地域には貧しい先住民が多く居住する。その主張は、天然資源から上がる収入をより多く国民に還元せよ、というものだ。これに対し、資源豊富な東部は地方自治強化を求めた。抗議行動が過激化、国内がまたもや騒然とする中、政権維持の目途がなくなったメサ大統領は結局辞任、メサ政権は2年もたずに幕切れとなった。


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