2024年4月26日(金)

“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年11月28日

W杯で全選手が出場した南ア、イングランドとジャパンの違い

――カーワンHCは引き続き第7回大会まで日本代表を率いることになりましたが、丸4年間をかけた強化により日本代表に何をもたらせたのでしょうか。

 期待値が高かったカーワンジャパンでしたが、第7回大会の日本代表は初戦のフランスに「21-47」、続くニュージーランドには「7-83」、トンガには「18-31」で、最終戦のカナダとはまたしても「23-23」の引き分けでした。

 結果が伴わず、むしろ大敗と考える人たちが多いのですが、次のエディージャパンに繋がるものを残しています。それは日本代表を60人のスコッド(代表に選抜される選手枠)で考えたことです。それまでも日本代表候補の大枠の考え方はありましたが、基本的に代表と称するのは大会規定内の人数で日本代表の枠を考えていたのですが、カーワンはニュージーランドのトレーニングスコッドという方式を取り入れ、60人で日本代表を考え、各ポジションに序列を持ち絞り込んでいったのです。その考え方はエディージャパンやジェイミージャパンにも引き継がれています。

 ちなみに、今大会で日本代表は登録された31人のうち試合に出場したのは26人にとどまりました。一方、優勝した南アフリカやエディーが率いて準優勝したイングランドは、大会を通じて全員を出場させており、決勝トーナメントまでの戦いを見据えた選手を揃えてきました。日本代表の次なる目標はより早く戦略や戦術を確定した上で、それが体現出来る代表選手の強化とセレクションを活発に行い、スコッド全体のレベルアップにあるような気がします。

 現代ラグビーがより立体的で強度も上がって来ているので、そこの打開策はこれまでの日本代表の歴史と同様に多くの方々の叡智が結集することを願います。今大会では、全国のラグビーファンや初めてラグビーを観る方々にも、戦い方の進化やチームのあり方など、大きく飛躍した姿を見せてくれたことは間違いないので、継続的な進化と新しい選手の発掘、この4年間のうちに「ティア1」に入る事を是非達成して欲しいと期待しています。

――その後、エディージャパンは第8回大会で歴史的な勝利を収めますが、過去のジャパンとエディージャパンの違いはどんな点にあったのでしょうか。また、平林さんの主な役割をお聞かせください。

 エディーさんは選手の強化と育成を同時に行いました。だから練習時間が長く、世界一のハードワークと言われたのです。しかし、選手に厳しいトレーニングを課すだけでなく、幅広く可能な限りの情報を集め代表強化に生かしていきました。

 バックルームスタッフは選手よりもHCと接点を持つ機会が多い黒子的な存在です。カーワンジャパンでの役割は限定されたものでしたがエディージャパンでは多岐にわたりました。僕が担っていた主な役割は規律の文化作りです。当時、規律の文化作りに着目したチームは珍しかったと思います。また毎年改定されるルールの変更点をいち早く収集しチームの戦術へ反映させることや、ゲームマネジメントのスキルアップのプログラムを行うこと。レフリーのプロファイリングと分析。試合にはいくつかのターニングポイントがあるのですが、それはどこにあったのか、誰が関わっていたのかなどのゲームチェンジャー分析も僕の役割です。

 ちなみに今回のイングランド代表のスタッフは31人で日本代表は20人でした。役割に応じてスタッフを配したエディーらしい陣容だったと思います。

(詳細は、『ラグビーの意外な勝利の法則「レフリーを攻略する」』)

 日本代表はその時代ごとに監督やHCが代わりながらも少しずつですが世界との差を詰めていきました。それがエディージャパンで花が咲き、今回のジェイミージャパンの躍進へと繋がって空前のラグビーブームを生み出すことになったのではないでしょうか。

――組織の近くにいながらチームを俯瞰する役割を負い、客観的な視点から情報収集と分析を行って、チームとしての知の集積を担っていたということですね。平林さんはエディージャパンで培ったスポーツインテリジェンスを確立し、コーチングプログラム「ゲームアウェアネスプログラム」として様々な競技を対象に指導を行っています。平林さん、お忙しいところお時間をいただきありがとうございました。

※今回は丸の内からラグビーの新たな魅力を届ける「丸の内15丁目PROJECT.」のKominkan(公民館)で行われたイベントを再編成したものですhttps://marunouchi15.com/

  
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