2024年4月25日(木)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年12月3日

日本も危ない、亡命スパイは泥を吐く

 11月23日、香港や台湾、オーストラリアで活動した中国のスパイとされ、王立強と名乗る男性が豪州当局にその諜報工作の内容や資金源、関係者など詳細情報を提供し、亡命を申請したことが報じられた。当局は情報を精査中としながらも、早速、その供述に基づき、関係者とされる「大物」夫婦が台湾を出国しようとしたところで当局に身柄を拘束され、現在検察に移送され、台湾当局の取り調べを受けているという(11月26日付、ボイス・オブ・アメリカ(VOA))。

 調査が進むにつれて状況が明らかになってくるだろうが、一般論としていえば、スパイが亡命し、敵側に寝返った場合は、泥を吐く。そこで、同系列の「スパイ同僚」たちだけでなく、工作で買収された各国の政財界の大物も続々と芋ずる式であぶり出される。どちらかというと、後者のほうがもっと衝撃的だ。

 現に台湾では、暴露情報で大騒ぎになった。昨年の統一地方選で、与党民主進歩党の候補を妨害するため、中国の情報機関が「サイバー部隊」を設立するのに協力し、ネット上の議論を誘導し、メディアへの影響力行使や野党中国国民党への「草の根」の資金提供を支援したと王氏が証言した。

 台湾の総統府は11月23日、情報機関が関連の調査を開始しているとの声明を発表。名指しされた国民党の総統候補、韓国瑜高雄市長は「中国共産党の金銭を1台湾元でも受け取っていたら、出馬を取りやめる」と述べ、慌てて疑惑を否定している(11月23日付、産経新聞オンライン)。

 事実ならば、もはや出馬をやめるだけで済むことではない。必死で否定するのも頷ける。いまになって、「中国共産党政府と無関係だ」と関係を断ち切るのは何よりも、いちばんの保身になる。「親中派」のレッテルを張られただけで、おいおい、変な金を受け取っていないかと疑われたらオチだ。

 「清算キャンペーン」たる嵐がそのうち、日本の政財界にやってこない保証はどこにもない。親中やら友好やら、昔なら美辞麗句だったが、いまは状況が変わった。この手の話でトラブルに巻き込まれると、厄介である。日本人は時代の流れを見誤ってはいけない。

 「Pick a side」(どちらの側につくのかを決める)の時代である。中立や中庸はない。

  
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