2024年12月22日(日)

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

2020年3月22日

iStock / Getty Images Plus / Kagenmi

 「92コンセンサスなんて存在しない。当時、台湾の最高責任者だった私が言うんだから間違いない」と李登輝は言う。

 92コンセンサスとは、1992年に台湾と中国の間で「合意したとされる」もので、内容は「台湾と中国双方が『ひとつの中国』の原則は堅持しつつも、その解釈についてはそれぞれに裁量を与える」というもの。解釈については台中双方に食い違いがあるのだが、台湾側の主張は、台湾と中国で「どちらが正当な中国か」をいつまでも争っていては話し合いのテーブルにつけないので、とりあえず同じ「中国」という基礎の上に立っているのだから、お互いの主張は置いておいてまずは話し合いましょう、という合意だ。

中国との関係を見直しはじめた親中派

 先日、国民党主席選挙が行われ、まだ40代の江啓臣が当選した。1月の総統選挙で大敗したことで、主席の呉敦義が辞任したのを受けての選挙だったが、この選挙そのものも台湾がすでに新しい時代に入ったことを象徴する結果になったのではなかろうか。

 選挙は江啓臣と郝龍斌の一騎打ちで行われた。江啓臣は台中出身の立法委員で48歳の若手。かたや郝龍斌は、蒋介石夫人の宋美齢から寵愛を受けた郝伯村の息子で台北市長や副主席を歴任した、いわばこれまでの国民党内では典型的なエリートとされた経歴を持つ。

 この候補者二人が揃って「見直し」を示唆したのが、「92コンセンサス」だ。ただし、この「92コンセンサス」は文書にも残されておらず、口頭で結ばれたと国民党が主張するばかりの代物だ。しかし、これまで国民党は「ひとつの中国」を拠りどころとしてこの合意に縋ってきた。その見直しを示唆した若手の江啓臣が主席に当選したわけだが、これは国民党の大転換点になる可能性をはらんでいる。


新着記事

»もっと見る