世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月30日

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 3月21日、イラン保健省は、新型コロナウイルスへの感染が確認された人が前日より966人増えて2万610人となり、死亡した人は123人増えて1556人になったと発表した。この時点で感染確認者が2万人を超えたのは、中国、イタリアに次いで世界で3番目となった。

Denis_prof/iStock / Getty Images Plus

 日本政府は、このイランに対して、WHO(世界保健機関)に拠出する155億円のうち約25億円を充てることを、3月17日に茂木外務大臣が明らかにした。

 そんな中、3月20日、イランのロウハニ大統領は、イラン暦の新年メッセージで、米国による経済制裁の解除を求めた。

 これに関して、3月16日、英国のシンクタンクIISS(国際戦略研究所)のマーク・フィッツパトリック米国事務局長は、同研究所のサイトに、「米国はいかにイランのコロナウィルス対策を支援し、外交を強化することができるか」と題する論説を寄稿した。その論旨を簡単に言えば、イランはコロナウイルスの危機にある、イランは支援を欲している、米国は人道的な観点から支援すべきである、支援のための良策はイランがIMFに要請した支援の実現に力を貸すこと、およびイランが薬品と医療器材を欧州から買えるようEUが設立したINSTEXを承認することである、ということである。もっともな意見であろう。

 フィッツパトリックは、トランプ政権が目指すレジーム・チェンジは幻想でしかない、もしレジーム・チェンジがあるとすれば、それは革命防衛隊のクーデタによるもので事態は現在よりも悪化すると指摘する。その上で、米国がイランを支援するため上記の人道的な措置を取ることが出来れば、受刑者の相互解放を含め外交上の接触の糸口になろうと期待している。イラン核合意は欠陥品だと声高に言い、「最大限の圧力」戦略に屈する他ないと脅かし、より良い合意の交渉を呼びかけたところでイランが応ずる筈もない、と分析する。論説の提案は地味ではあるが、何らかの進展の可能性のある提案に思える。

 論説でも触れられたスイス・チャネルは、2月27日にスイスと米国の両政府が最終的に合意して公表したものである。それは、スイス所在の企業が農産物、食料、薬品および医療器具をイランに輸出する際に利用可能な金融の枠組みである。これは、米国の制裁の人道上の例外と整合性のあるものとして、米国財務省が承認した枠組みである。そうなら、INSTEXを人道的な貿易に限定すれば財務省の承認を得た枠組みとすることは可能であろう。本来、INSTEXはイランの石油輸出を可能にすることを狙いとしていたのであるからEUとイランの志とは異なるが、新型コロナウイルス危機に対処するために、早急に始動させ得るのであれば、人道的な貿易に限定することの利益はあるであろう。

 イランの新型コロナウイルス危機は深刻である。この程度の微々たる支援を米国が出来ない筈はない。今後、新型コロナウイルスは途上諸国に拡散して行くであろうが、イランで協力の実績を作ることは西側にとって有用であろう。中国に余計な介入をさせないために日本も全面的に協力すると良い。

  
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