2024年11月22日(金)

世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2020年5月13日

中国のコロナ外交の限界と課題

 中国のパブリック・ディプロマシーは、21世紀に入って相当戦略的に展開されてきており、米国世論対策は一定の効果をあげてきていた。しかし、2010年代以降、中国が大国としての自信をつけ始め、さらに近年、米国との関係が厳しさを増してきたことを背景に、より強硬に自国の主張を展開すべきだとの考え方が前面に出てきた。

 いわゆる「戦狼外交」と呼ばれるアプローチであり、若きスター趙立堅副報道局長の登場でその動きが加速した。国益を重視し、堂々と自国の立場を主張するというアプローチなのであるが、相手に恩着せがましく感謝を要求したり、恐喝的な発言を繰り返したりするやり方が各国から品格を伴った外交とは認められず、逆効果を生んでいると考えられる。

 「戦狼外交」のような強硬なやり方に対し、中国国内でも疑問も提示され始めており、中国社会科学院が運営するウェブサイトの文章「中国への外部からの攻撃への対応能力向上に注力せよ(中国語:着力提升因应外部对华舆论攻击能力)」(4月24日付)は、世論戦に勝利するために中国がとるべきコミュニケーション手段を以下のように具体的に述べている。

・コロナウイルスが世界中に広がったことで海外メディアによる中国に対する攻撃的な報道が増加していることを受け、政府メディア、民間メディア、メディアワークアソシエーション、外交部、重要企業、シンクタンク等が海外世論を監視するための多元的なメカニズム(ネットワーク)を構築する。

・米国等主要な外国メディアの動態を24時間体制で監視し、中国に対する誹謗・中傷・攻撃への迅速かつ強力な対応と反撃を組織し、否定的な世論の発信源と拡散をカバーするよう努める。

・TwitterやFacebookに代わるものとしてWeiboやWeChat等中国のソーシャルプラットフォームを使い、宣伝する。

・言葉の応酬だけでなく、冷静かつ客観的に、理性を持って人々を説得し、平等・協力・善意の概念を解き放つなど、メディア対応の方法や取り組み方を改善すべきである。(一部抜粋)

 果たして中国が効果的なパブリック・ディプロマシーを発揮できるかどうか、そのためにはあまりにも攻撃的な外交の危うさを反省し、冷静かつ客観的な対応を行う必要があるだろう。その際、他国への恩着せがましいやり方や恫喝的な手法によってではなく、相手方への思いやりの気持ちを持つことも必要と考えられるが、急速に大国化した中国がごう慢な考え方を改めるのは容易ではないとみられる。まさに中国のパブリック・ディプロマシーは大きな試練に直面しているといえる。
 

  
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