2024年6月22日(土)

WEDGE REPORT

2020年5月30日

2019年明けからムード一変

 しかし、2019(平成31)年が明けてから、空気は一変する。1月にモスクワで行われた外相会談で、ラブロフ外相は河野太郎外相(当時、現防衛相)に、「南クーリル諸島(北方領土のロシア側呼称)は、第2次大戦の結果、ロシア領になった」と、今回のザハロワ報道官同様の認識を披歴、「日本がこれを認めない限り、交渉は進展しない」と言い放った。それ以後、ロシア側はこの不当な主張をことあるごとに持ち出してきている。

 外相会談の直後にやはりモスクワで行われた首脳会談でもプーチン氏は強い姿勢をくずさなかったようだ。安倍首相は終了後の記者会見で、会談の内容に言及することは避け、「戦後70年以上残された問題の解決は容易ではない」と言葉少なに語るだけだった。シンガポール会談直後の高揚した様子とは打って変わった厳しい表情を」みせた。 

 それ以来、首脳会談、外相会談がそれぞれ何度か開かれたが進展をみていない。

 昨年9月、ロシア極東、ウラジオストクで開かれた首脳会談では、プーチン氏がその直前、北方領土、色丹島での水産加工場稼働記念式典にビデオメッセージを送るという、いやがらせじみた行動をとった。

 2020年春には、プーチン氏の現在の任期が切れる24年以降も実権を保持することを可能にするロシア憲法改正案が下院に提出され、このなかには「領土の割譲」「領土交渉」を禁止する条項が盛り込まれた。

 改正案には、「隣国との国境画定や再画定を除く」という例外が設けられ、日本のメディアなどは、北方領土は対象外になったと報じている。しかし、正しい見方か。

 日本国内のロシア専門家によると、「国境画定交渉」という言葉は旧ソ連時代に、先方がよく用いただという。当時、「国境画定交渉」においてソ連は、けんもほろろの態度をとり続けたのだから、現在において「国境画定交渉」を行ったとして、ロシアが日本側の主張を簡単に認めるだろうか。

 そもそも「国境画定」からは、国境線を微調整するというニュアンスが感じられる。ロシア専門家によると、ロシアはエストニアとジョージアとの国境交渉だけを念頭に置いているという。プーチン大統領はじめロシア要人が正式に、わが北方領土も例外の対象であると明確に表明したことはない。採決が新型コロナウィルスの影響で延期されているのが救いだ。


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