世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年6月23日

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 6月6日号の英Economist誌は、「香港は中国と世界をつなぐ通路であり続けられるのか。金融センターとしてのその将来はこれに掛かっている」との社説を掲載している。

estherpoon/iStock / Getty Images Plu

 今のところ、新たな国家安全法を香港に適用するという5月28日の中国共産党の決定以降も、香港の金融市場は比較的落ち着いているが、今後どうなるかを占う基準として、エコノミスト誌の社説は、次の3つを挙げた。

 1つ目の基準は、中国が新しい国家安全法をどのように実施するか、である。たとえば、独立した裁判官によって適用されるのか、中国共産党に同情的な裁判官によって適用されるかである。2つ目は、アメリカが香港のドル支払いシステムを制裁対象とするかどうかである。もし制裁対象となれば、香港の金融市場にとって即時の混乱を引き起こす可能性がある。そして最後は、中国共産党が香港での抗議行動の抑圧や政府批判者への威嚇だけではなく、裁判所、中央銀行、規制当局、会計処理の適正さなど、香港の独立した機関を損なわないかどうかである。香港がこれらのテストに合格しない場合、グローバルな金融センターとしての地位は失うことになるだろう。

 香港情勢が今後どうなるか、まだ不明確な点が多くあるが、はっきりしている点もある。中国の王毅外相は、香港問題は中国の内政問題であり、他国は内政には干渉しないようにとの発言をしている。が、これは間違った主張である。香港の1997年の中国返還を定めた1984 年の「英中共同声明」は、名前が共同声明なので誤解している人もいるが、れっきとした条約で、批准条項もあり、英中間で批准書も交換されている。

 今回、国家安全法を中国の全国人民代表大会(全人代)で作ると言うのは、香港は立法権を持つという条項に違反している。中国が条約という国際法に違反していることは、はっきりしている。そのことに文句をいうのは内政干渉には当たらず、条約は守られるべしとの国際法の大原則に基づく正統な主張である。

 「英中共同声明」については、その違反を公式に咎めうるのは当事国である英国であるが、香港の法的地位は、他国の権益にも関係がある。日米両国も、そういう利害関係国として一定の発言をすることが許されるだろう。

 最近の中国は、新型コロナウイルスを米軍が武漢に持ち込んだとか、中国が武漢で新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだことに世界は感謝すべきとか、安倍総理が新型コロナウイルスの発生を中国の責任にしようとしたと非難するなど、ゲッベルス並みの嘘も百回繰り返せば真実になるということに基づく宣伝を行っている。米軍がウイルスを持ち込んだとの陰謀論を最初に打ち出した趙立堅は報道官に取り立てられている。今度の王毅外相の「内政干渉論」も同工異曲である。

 こういう中国の国際法違反や不当な宣伝工作については、厳しく追及していくべきであろう。

 香港の経済の将来については、米国がどのような制裁を課すかにより変わってくる。上記のエコノミスト誌の社説があげている3つのポイントは重要であるが、政治的には反発するが、経済的にはおおむね従来通りという姿勢は良くないと考えている。中国がその国際法違反に何の代償も払わないということにしてはならない。香港人の経済的利益を損ねるのは忍び難いところがあるが、国際法違反に対しては、きちんとした不利益を中国に与えるべきであろう。そうでないと、中国の国際法違反行為は南シナ海でのものを含め、ブレーキがかからず、将来に禍根を残すことになろう。

 レーニンは「資本家は利潤のためには自らを縛り首にする縄でさえ売る」と言ったことがあるが、香港についての政経分離の対応は中国の狙い通りになることであるほか、中国の軽侮を招くと思われる。

 香港問題については、西側民主主義諸国の団結を重視すべきである。それが日本の安全にもつながる。

  
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