2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年7月8日

 6月19日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、「もし中国が米国と良い関係を持ちたいのなら、中国はもっと良い行動をしなければならない」と題する論説を寄せ、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪共産党政治局委員(外交統括)との会談の内容を紹介しつつ、それが実質的には物別れであったと論じている。一部その要旨を紹介する。

ffikretow/iStock / Getty Images Plus

 ポンペオ国務長官は、楊潔篪と6月17日ハワイで会談と晩餐のため数時間会った。最近の米中関係で顕著となっている相互非難を抑制する方法を探すため、中国側から今回の会談を要請してきたと言われる。それまでは、習近平がトランプに電話をすれば良かったが、トランプは3月27日の電話会談後、習近平と話すことに興味はないと言っていた。

 国務省の声明は、「2人の指導者は意見交換をし、ポンペオは商業、安保、外交の分野で中国が不公正な慣行をやめる必要があると強調した。また、進行中のCOVID-19パンデミックと戦い、将来の大発生の防止のためには完全な透明性と情報共有の必要性があると強調した」と述べている。一方、中国の外務省によると、楊はより良い関係を望んでいるとポンペオに言ったが、香港への国家安全法、台湾への威嚇、新疆でのウイグル人の強制収容などあらゆる争点について、中国の立場を擁護した。

 北京のやり方のパターンはよく知られている。北京の悪い行為を批判する人を侮辱または攻撃する。その後、緊張の高い状態を非難し、通常の関係に戻ることを、行動を何一つ変えずに提案する。しかし、今回は通常の関係に戻ることはない。

 ロウギンの論説は、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪政治局委員との会談がうまくいかなかったこと、現在の米中関係悪化の傾向に歯止めがかからなかったことを指摘している。

 米中外相会談の成果は、今後も話し合おうという合意だけである。中国側はこれまでの行動を擁護し、行動を変えることを拒否したが、そういうことでは再度話し合っても何も出てこないことになろう。

 香港への国家安全法制の押し付け、新疆でのウイグル弾圧、台湾への恫喝は内政問題ではない。香港については、1984年の英中共同声明と言う条約に違反している問題であって、条約を守るかどうかの国際的な問題である。ウイグル問題については、国連憲章下で南アのアパルトヘイトなどに関連して積みあがってきた慣行は、人権のひどい侵害は国際的関心事項であるということである。台湾が中国とは異なるエンティティとして存在しているのは、事実である。

 中国が台湾は中国の一部と主張していることを理解し、尊重するということは、中国が台湾に武力行使をしていいことを意味しない。

 そのほか、インドとの国境紛争、豪州に対する経済制裁、ファーウェイ副社長のカナダでの拘束に絡んでの中国でのカナダ人拘束など、中国の最近のやり方には、国際法秩序を無視した遺憾なものが多い。中国が大きな国際的な反発の対象になり、そのイメージが特に先進国で悪化してきていることは否めない。

 中国の緊張を高め、その緩和を申し出、その緩和の代償として相手側に何らかのことを譲らせるやり方は、ソ連、北朝鮮、中国などの共産国が多く使用してきた外交戦術であるが、すでに使われすぎて、相手側に見透かされるものになって来ている。

 中国が行動を変えるべきであるとのロウギンの論説は、そういう状況の中で適切な論であると言える。

  
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