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2020年7月3日

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上林功 (うえばやし・いさお)

追手門学院大学准教授

1978年11月生まれ、兵庫県神戸市出身。追手門学院大学社会学部スポーツ文化コース 准教授、株式会社スポーツファシリティ研究所 代表。建築家の仙田満に師事し、主にスポーツ施設の設計・監理を担当。主な担当作品として「兵庫県立尼崎スポーツの森水泳場」「広島市民球場(Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島)」など。2014年に株式会社スポーツファシリティ研究所設立。主な実績として西武プリンスドーム(当時)観客席改修計画基本構想(2016)、横浜DeNAベイスターズファーム施設基本構想(2017)、ZOZOマリンスタジアム観客席改修計画基本設計など。「スポーツ消費者行動とスタジアム観客席の構造」など実践に活用できる研究と建築設計の両輪によるアプローチをおこなう。

 やはりプロ野球は面白い。個人的な思いが先走ってしまうが、6月19日に開幕したプロ野球を思った以上に楽しんでいる。プロ野球はセ・パともに無観客で開幕し、多くのチームがオンライン視聴での楽しみ方を提案している。ネットの強みであるオンラインコミュニケーションによるファンコミュニティを生かした盛り上がりは、今後のスポーツビジネスにも充分取り入れられる内容だろう。いまだ新型コロナウイルスへの対応で大変な状況であり、選手はじめ球団やスタジアム関係者の不断の熱意と努力が開幕を実現したのだと思うと頭が下がる思いである。

 こうして始まったプロ野球であるが、存外、来場者のいない中継も不思議な感覚ながら楽しめる。無観客で声援がない中での試合は、オリンピックやパラリンピックで感じるような競技に集中して見入ってしまう感覚に近しく、スポーツ視聴に飢えていた身としてはかえって新鮮で、選手の一挙手一投足に集中できて、これはこれで良い楽しみ方だと思う。これまで以上にスピードガンやリプレイに集中して、試合内容を深堀したい欲求にかられる。

 アメリカメジャーリーグは7月23、24日をめどに無観客での開幕が決定した。個人的には無観客だからこそ注目するメジャーリーグでの試合配信がある。すでにコロナ禍前から取り組まれていた内容であるが、メジャーでは選手のパフォーマンスや成績がすべてデータ化されており、打球が飛ぶ方向や進塁率などを中継画像に重ねて一目でわかるような映像演出がおこなわれている。よくスタジアムの常連オヤジが「今シーズンは高め狙ってんだよなー」とか「ライト方向によく飛んでるんだよね」といったいわゆる「通」な視点で観戦を行っているが、この常連オヤジの視点で誰しもがスポーツを楽しむことができる仕組みである。

世界に先駆けてオンライン会議ツールを活用したリモート応援を取り入れたデンマークのプロサッカー「スーペルリーガ」(ロイター/アフロ)

 試合内容に注目する無観客の今だからこそ生きるオプションサービスではなかろうか。個人で楽しむのみならず、友人や知人同士でリモートマッチを楽しむ際にもこうした情報があるとチャットも盛り上がるというもの。ぜひこの機会に国内プロ野球でもより多くの情報を放映配信に付加して欲しいものである。スタジアムの電光掲示板のスピードガンの表示よろしく、データを表示する際には広告を部分表示させるのも手かもしれない。サービスの拡充と合わせて収入に繋げる工夫も、実入りが厳しい今だからこそセットで考えるべき内容だろう。

 この7月からはJリーグも再開される。もちろん無観客となるが、野球とは異なりサポーターによる熱のこもった応援が特徴的なサッカー文化では、プロ野球以上に盛り上がりをどのように演出するかがとても重要になるんじゃないかと考えている。既にデンマークのプロサッカー「スーペルリーガ」は対コロナの観戦スタイルとして世界に先駆けてオンライン会議ツールを使用した双方向のリモート応援を取り入れ話題になった。無観客のスタンドに巨大なLEDパネルを設置して画面の向こうのサポーターたちがマルチ画面で大写しになる姿は壮観で、すでにプレミアリーグでも一部導入が検討されるなどサッカー観戦の「ニューノーマル」が構築されつつあるように感じられる。

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