2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2020年7月3日

 米国はシェール革命により天然ガス価格が下落し、炭鉱から距離がある発電所では天然ガスに競争力が出てきたため、第一次オイルショック後に発電量の約50%を賄っていた石炭火力の比率は急速に減少している。民主党知事の一部州では、温暖化問題の懸念から脱石炭を打ち出しているが、実態としては経済性の問題から石炭離れが進んでいる。2019年の発電実績では天然ガス38%、石炭24%と石炭のシェアは最盛期の半分以下まで落ち込んでいる(図-3)。

安定供給は維持可能か

 今回の石炭火力からの発電量削減の背景には、安定供給は維持可能との分析があるのだろう。日本の電力需要量は伸びていない。その理由は産業用で大きな需要を占める製造業の伸びがないこと、民生用では家電製品、照明器具などで節電が進んでいることだ。人口が減少するなかで電力需要の大きな伸びはこれからないだろう。民生用需要に影響を与える世帯数は、人口減少にもかかわらず、伸びているが、これも2023年から減少に転じると予想されている。

 需要が伸びないなかで、太陽光を中心とした再生可能エネルギーの導入と原子力発電所の再稼働があり、今後とも発電設備量は増加することになるので、老朽化した石炭火力を廃止しても供給量は充分維持可能との予測があるだろう。

 さらに、化石燃料の安定供給の問題もなさそうだ。日本は依然として一次エネルギー供給の約4割を石油に依存しており、天然ガスも含めると中東依存率も約4割だ。しかし、電力供給だけをみると、石油火力は今ほとんどなく、液化天然ガス(LNG)利用が最も多く、次が石炭になっている(図-4)。

 石炭火力を削減すれば、豪州、インドネシアを中心に多様化している供給源が減少し、リスクが増すように思われるが、米国のシェール革命で事情は変わった。日本は天然ガス輸入のうち2割強を中東に依存しているが、米国が天然ガスの輸出国になり日本も輸入を開始した。エネルギー供給を依存する先としての安定感から言えば米国からの輸入は心強いに違いない。しかし、エネルギー供給では様々なことが起きる。いま石炭輸入の約3分の2を依存している豪州という安定した供給先を失うリスクも考える必要がある。


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