第20条や第22条は国際法に抵触する可能性も
香港基本法と照らしても、国際法としても気になるのが、国家分裂罪について書かれている第20条(何人も次の各号に掲げる、国家の分裂、国家の統一破壊を狙う行為の一つを組織し、画策し、実施しまたは実施に加わったときには、武力を使用しまたは武力で威嚇したか否かに関わらず、犯罪となる)だという。
「武力を使っていない場合でも国家分裂罪を適用するのは、いろいろな法律家から国際法違反ではないかという指摘が出ています。国家政権転覆罪が書かれている第22条(何人も次の各号に掲げる、武力、武力使用の威嚇またはその他の不法な手段によって、国家政権の転覆を狙う行為の一つを組織し、画策し、実施しまたは実施に加わったときには、犯罪となる)もそうです。国際人権法や国連人権規約などでも武力が発生して初めて適用されるので、そこはポイントだなと感じています」。確かにデモ行進をしただけでも違法と解釈されかねない文面だ。
また、第24条では爆発や放火、交通手段の破壊、ネットワークなどの管理する電子制御システムへの妨害・破壊する行為などはすべてテロ活動罪として適用されるが「逃亡犯条例の時のデモで繰り返されたことをすべてストップさせようという意図も感じられます」と語った。
人権においては日本より進んでいた香港基本法
話はそれるが香港基本法の特徴について話を聞いてみた。すると「日本より人権の保障が進んでいると感じるのは、香港基本法第39条に国連人権規約を継続適用すると書かれていることです。それをさらに香港人権条例として域内法化してもいます。日本はそこまで出来ていません。香港は国際レベルでの人権が保障されているのは素晴らしいところだと思います」と語るだけに、国家安全維持法はそれを形骸化させるものとして懸念するのは十分と言えそうだ。
廣江准教授は「中英共同声明について、イギリスは国連に登録した条約だと話し、中国は歴史的文書章だから関係ないと話すなど対立しています。私は国連に登録したものと解釈していますが、今回のことで、中国が考える『1国2制度』と香港が考える『1国2制度』の違いが改めて明らかになったとは感じております」と答えた。
元をたどれば、サッチャーと鄧小平が異なる2つの体制を台湾で使おうとしていた「1国2制度」を香港に使うことで政治的な折り合いをつけた。それから時代が流れ、変化して、それがもたなくなってしまった。そして、大国化した中国がその力を用いて香港をより中国化させたということだろう。
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