Wedge REPORT

2020年8月28日

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 「レジ袋だけ削減しても環境問題が根本的な解決にならないのは環境省もわかっている。百歩譲って有料化を容認したとしても、プラスチックごみ全体をどうしていくかのビジョンは描けていない」

レジ袋の問題はその「使用後」の処理方法にある  (AFP=JIJI)

 7月1日から始まったプラスチック製レジ袋の原則有料化。小誌の取材に対して憤るのが、レジ袋を日本で初めて開発した中川製袋化工(広島県大竹市)の中川兼一社長だ。同社のレジ袋事業はピーク時には売り上げの約半分を占めた柱だが、7月以降は昨年比の5割減になっているという。

 レジ袋有料化は、2019年5月に策定した「プラスチック資源循環戦略」に盛り込まれた。政府はレジ袋有料化の狙いを、海洋プラスチックごみ問題と地球温暖化問題に対応するため、プラスチックごみ問題への国民の理解を広げ、行動変容を促すためとする。

現時点で生態系への影響はない
海洋マイクロプラスチック

 そもそも、海洋プラスチックごみには三つの問題がある。

 第一に、レジ袋などプラスチック製品をウミガメなどの海棲生物が飲み込むこと。第二に、漁具や容器などのプラスチックごみが砂浜等に漂着することによって景観を阻害すること。第三にあるのが、マイクロプラスチック(一般的には大きさ5ミリメートル以下のプラスチック)が海を漂っていることだ。マイクロプラスチックに残留性有機汚染物質(POPs、ポリ塩化ビフェニルなど)が吸着・濃縮し、生態系や人体に悪影響を与えることが懸念されている。

 だが、環境省リサイクル推進室の金子浩明室長補佐によれば「マイクロプラスチックの人体、生態系への影響は科学的に研究途上であり、それをもって規制をかけようという段階ではない」という。

 そうであれば海洋プラスチックごみ問題で対処すべきは、第一、第二の問題をもたらす、海に流出するプラスチックごみの量をいかに減らすか、ということになる。だが、多くの人が抱くイメージと現実は違う。環境政策が専門の神戸大学・石川雅紀名誉教授は「有料化してレジ袋の使用量を減らしても効果は少ない」と指摘する。

 最も引用されている論文の推計では、日本から海洋に流出したプラスチックごみの量は3万6000トンだが、プラスチックごみの総量のわずか0.5%に過ぎない(10年)。日本においては廃棄物管理が徹底されており、使われたプラスチック製品のほとんどが海洋へと流出していないのだ。

 逆算すると、海洋に流出しているプラスチックごみを1万トン減らすにはプラスチックごみの総量を200万トン減らさなければならないが日本で使用されているレジ袋は年間20万トンといわれており、それらをすべて減らしても全く足りない。これについて金子室長補佐も「レジ袋はこれまで自主的に取り組んできた事業者がいたこともあり、有料化に踏み込みやすいことから始めた」と語る。

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