2024年4月20日(土)

スウェーデンで生きる 海外移住だより

2012年7月17日

 人口の15%を占める外国生まれの国民。出生国別で見ると、フィンランドが11.7%(166,723人/2011年現在)で一番多く、次にイラク9%(125,499人)、ポーランド5%(72,851人)、その後ユーゴスラヴィア、イラン、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ドイツと続きます。

 昨年スウェーデンに移り住んだ人(96,467人)に限っては、多い順からスウェーデン人の帰国者21.4%(20,615人)、イラク人4.6%(4,469人)、ポーランド人4.6%(4,403人)、続いてアフガニスタン人、デンマーク人、ソマリア人、中国人、タイ人が並んでいます。ソマリア人は、2010年の時点でスウェーデン人帰国者に次ぐ数を有していましたが、難民の滞在許可発行が厳しくなった影響を受け、劇的に減少しました。

移民とスウェーデン人の相互理解を目指して

 何十年にも渡って、毎年何十万人もの移民が流入してきたスウェーデン。組織化した受け入れ体制の必然性は当然高まります。

 スウェーデン政府は1960年代半ばから徐々に支援政策を整えていき、「外国人」という呼び名も、より定住の意味を込めるために「移民」に変えられます。1975年には本格的な移民政策が打ち出され、移民のスウェーデン社会への適応容易化が図られました。スウェーデン語教育の提供や地方参政権の付与はその例です。また、母国文化の維持も配慮され、子供の母国語教育や外国語新聞の出版などの工夫も施されました。

 しかし、移民を特別枠で囲んでしまう多文化主義政策では、彼らの生活状況は向上しません。1990年代後半以降、政策のキーワードは「多文化主義」から「多様性」へと変更され、方針もインテグレーション(統合)へと移行。移民の一方的な社会順応ではなく、移民とスウェーデン人の相互理解と適応の実現に努力しています。

 ちなみに「移民」という言葉ですが、子孫の増加や特徴の多種化によってあらゆる概念や価値観を含むようになり、一概に誰を指すのか定義することができなくなっています。このため、昨今は「外国生まれの人」、「移民2世」そして「外国に背景のある人」という名称が代行されるようになりました。本人がスウェーデンに移り住み住民登録をした、いわゆる移民は「外国生まれの人」。外国生まれの二親を持つスウェーデン生まれの者は「移民2世」。その双方を含めた名称が「外国に背景のある人」です。統計や公的資料など厳格な定義を必要とする際に、これらの名称が使い分けられています。

労働市場への参入と言語問題

 移民のインテグレーション政策。現代世界では共通の理念で、The British CouncilとThe Migration Policy Group は2004年からMipex (Migrant Integration Policy Index・移民統合政策指数)の調査を行っています。3年おきに発表されるその結果によると、対象33カ国の中でスウェーデンは2004年、2007年、2010年と連続でトップに立ちました(2010年から日本も対象国)。しかし、これが形式的な指数であることはスウェーデン政府も多くの政治家も認識しており、国内のインテグレーション政策は完璧には程遠いのが現状です。


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