2024年11月23日(土)

スウェーデンで生きる 海外移住だより

2012年7月17日

 外国に背景のある家庭では敢えて子供にスウェーデン名をつけるところも多く、また、この調査が行われた2004年の前半期だけでも102の家庭や個人が改名を申請、そのうち4人に一人は差別やいじめを理由に挙げたと言います。

 近年はインターネット上でも人種差別のサイトや投稿が増えてきました。移民に対する偏見や差別的な噂は急速に、かつ効率的に広まっています。表現の自由が保障されたスウェーデンでは規制をかけることができませんが、こうした声に対して政府は実証を掲げて反証するホームページ(regeringen.se/tolerans)を昨年12月に設立し、対応を行っています。

高まる移民政策への不満

 更に、失業率の上昇や低所得者が増える中で、寛容な移民政策に対する社会の不満は高まっており、排他運動も力を増してきています。年金制度の回でお伝えした、スウェーデン民主党の国会入りはその傾向の一つです。

 加えて、移民への敵意の表れはより根深いところからも生じています。昨年7月に起きたノルウェー連続テロ事件。ノルウェー国内において第二次世界大戦以降の最大惨事とされるこの事件の犯人は、反イスラム主義者とされています。この事件はスウェーデン社会にも大きなショックを与え、今年4月16日に開始した公判には現在も大きな注目が向けられています。

 宗教が関与した事件は、一昨年の12月にスウェーデンでも発生しています。クリスマス商戦で賑わうストックホルム中心街で、イスラム教過激派の男性が自爆テロを起こしたのです。一般死者は出ませんでしたが、平和な印象の北欧諸国でもこうした活動が盛んになっていることには不安を抱かずにいられません。スウェーデン国軍はこれらの事態を踏まえ、国内テロ脅威のレベルを一段階上げて警備に当たっています。

中国に向かうスウェーデン人が目立つ

 数を浮き沈みさせながらも増え続けてきたスウェーデンへの移民。しかし、スウェーデン統計中央局(Statistika centralbyrån)の予測によると、今後はその減少が続き、代わりに海外への移住の波が押し寄せるそうです。大きな要因としては労働市場のグローバル化が挙げられ、現に、昨年は年間人数歴代最多の51,000人が国外に出ています。

 渡航先にも変化が見られ、定番の北欧近隣諸国、イギリス、アメリカの他に、昨今は中国に向かうスウェーデン人が目立つようになってきました。多くのスウェーデン企業が進出していることもあり、昨年は1,787人が中国に入国。2010年と比べると、+80%の人数です(SCB)。

 スウェーデン人のアジア進出は、スウェーデン政府とアジア諸国の積極的な二国間社会保障協定締結に向けた取り組みのおかげで、今後更に進むものとされています。先日は新たにインドが協定国に加わり、また現在は日本、韓国、中国との協議が進められています。


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