2024年12月5日(木)

Wedge REPORT

2020年10月2日

実習生の斡旋に絡む「利権」

 「人材育成」といった趣旨は形骸化し、実際には人手不足解消の手段となって久しい。しかも実習生には、職場を変わる自由すら認められない。何から何まで、日本側に都合のよい仕組みなのだ。新聞やテレビでは実習生への人権侵害が頻繁に報じられ、米国務省に至っては「現代の奴隷制度」と批判する有り様である。にもかかわらず、制度は見直される気配はない。それは、なぜなのか。

 大きな原因が、実習生の斡旋に絡む「利権」である。中小企業や農家などが実習生を受け入れる場合、「監理団体」と呼ばれる仲介組織を通す必要がある。名前には公的なイメージがあるが、実態は人材斡旋業者と変わらない。しかも監理団体は、実習生1人の仲介につき、月3〜5万円程度の「監理費」を受け入れ先の企業などから徴収できる。ひとたび仲介してしまえば仕事は乏しく、実に旨味の大きなビジネスだ。実習生の賃金が安いのも、監理団体による「中抜き」が影響している。

 その監理団体の運営に、政界を引退したり、選挙に落選した政治家が関わるケースが目立つのだ。実習生の受け入れでは、ビザ関連のトラブルがつきまとう。その際、入管当局とのやりとりに「元政治家」の肩書きが威力を発揮する。

 もちろん、政治家が監理団体の運営に関与しても違法なことではない。だが、そうした政治の利権によって、実習制度は国内外から批判されながらも拡大を続けている。

 その問題に対し、安倍政権はメスを入れられなかった。結果、実習制度は温存され、特定技能による受け入れも増えない。

 さらにもう1つ、特定技能が盛り上げらない根本的な原因がある。外国人の出稼ぎ先としての日本の魅力が、急速に低下しているのだ。

  
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