2024年4月20日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2020年10月14日

民間のハイテク技術に大いに劣る

 アメリカには画像処理に強い半導体のエヌビディアという会社がある。アメリカ軍で配備しているシステムでエヌビディアの画像処理ユニットがいくつ稼働しているか、経営者に聞いたところ答えはゼロだったという。話はさらに以下のように続く。

 As the answer suggests, most US military systems are many years behind the state-of-the-art technology that commercial companies such as Nvidia are developing. The most capable computer onboard a US military system is the core processor in the F-35 Joint Strike Fighter, which has earned it the nickname “the flying supercomputer.” The processor can perform 400 billion operations per second.By comparison, the Nvidia DRIVE AGX Pegasus can conduct 320 trillion operations per second right onboard a commercial car or truck. That is eight hundred times more processing power.

 「その答えが示すように、アメリカ軍のシステムのほとんどは、エヌビディアのような民間会社が開発している最先端のテクノロジーに比べ何年も遅れている。アメリカ軍のシステムに搭載している最も性能が高いコンピュータといえば、F35戦闘機にのっているコアプロセッサで、F35は『空飛ぶスーパーコンピュータ』との異名を持つ。そのプロセッサーは毎秒4000億回の処理能力がある。それに比べ、エヌビディア・ドライブ・AGXペガサスは毎秒320兆回だ。民間の乗用車やトラックに搭載されているものだ。つまり800倍の処理能力があるのだ」

 アメリカ軍のデジタル化が遅れている背景として、軍事予算を巡る官僚主義の横行や、軍需産業の寡占化による技術革新の遅れ、といった構造的な問題もあげる。特に、グーグルやフェイスブック、アップルなどシリコンバレーのハイテク企業の技術が生かされていない。これからの戦場は、人工衛星や高性能センサーを活用してデータを収集し、それを高スピードで分析処理した側が優位になる。すばやく分析したデータをもとに、AIを搭載した無人の自動戦闘機が攻撃目標の位置を正確にとらえ攻撃するのが未来の戦い方だという。集めるデータは膨大になり、その処理は人間の能力を超える。だからこそ、アメリカ軍はAIの導入などデジタル化を急ぐ必要があると訴える。

 こうした無人の自動戦闘機は、パイロットの安全を考慮して設計する戦闘機に比べ格段に安いコストで製造できる。こうした低コストで高性能な無人の兵器を使った戦いはすでに始まっている。サウジアラビアの石油施設が2019年に攻撃され生産能力の半分を失った。この時は、17機のドローンと8つの巡航ミサイルによる攻撃だったという。しかも、現地でアメリカ軍が提供していた防衛体制では、こうした攻撃に有効に対応できなかった。


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