世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年10月28日

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 欧州政策研究センター所長のダニエル・グロスが10月7日付のProject Syndicateで、中国は今後クリーン・エネルギーの開発、普及でEUと協力するとともにEUへの挑戦者となるだろうと論じている。

MikhailMishchenko / SceneNature / iStock / Getty Images Plus

 この論説は、地球温暖化対策で、今後EUと中国は協力するとともに競合することとなろうと述べている。その通りだろう。

 EU市民の地球温暖化に対する危機感が強い。それを背景に、EUは気候変動に正面から取り組んでいる。気候変動の影響を抑制するための国際協力をうたった協定がパリ協定と呼ばれるのは象徴的である。

 欧州委員会は、9月17日、2030年の温室効果ガス排出削減目標を1990年比少なくとも55%とする提案を公表した。そのためには再生可能エネルギーの割合を、2018年の18%から35~40%に引き上げる必要がある。

 一方、中国は、世界最大の二酸化炭素排出国で、世界の28.2%(2017年)を占めており、EUの3倍である。その中国では、習近平が2060年にカーボン・ニュートラルになると述べた。これは大分先の話で、2030年には中国の排出量がEUの4~5倍になると予想されている。

 しかし論説は、中国が気候変動で近い将来世界のリーダーになれる可能性があると言っており、中国指導部はこれを強く認識し、気候変動を重視していると思われる。中国にはクリーン・エネルギー分野で大規模な投資ができるという強みを持っている。まず経済、財政の規模が大きく、その上貯蓄率が高い。そして中央政府が強力な権限を持っている。クリーン・エネルギーが中国にとって重要と思えば、集中的な投資が可能である。

 クリーン・エネルギーの普及をめぐっては論説が言う通り、EUと中国は今後とも協力を進めるとともに、EUは中国を挑戦者と受け止め対応をするだろう。地球温暖化をめぐってEUと中国がこのような関係にあることは望ましいことである。地球温暖化は中国がEUのみならず広く西側と協力できる数少ない分野である。中国と西側が経済、安全保障で対立している現在、西側と中国双方にとって貴重な分野であり、有効に活用することが望ましい。

 グロスの論説では、米国が欠落している。米国は中国に次いで世界第2位の二酸化炭素排出国で、2017年には世界の14.5%を排出した。2018年11月、米国政府の専門家委員会が報告書を公表し、地球温暖化が米国に及ぼす深刻な影響と対策を論じた。しかしトランプが地球温暖化に冷たいことは周知の事実である。実業家だった2012年11月に自らのツイッターで、「地球温暖化という概念は、もともとアメリカの製造業の競争力を削ぐため中国が作り出したもの」と断じ、その後も気候変動説を否定し続け、2017年には大統領としてパリ協定からの離脱を表明した。

 温暖化対策は世界が協力して取り組むべき課題であり、トランプのために米国がその努力から抜け落ちているのは嘆かわしい限りである。もし11月3日の大統領選挙で民主党候補のバイデンが勝利すれば、米国はパリ協定への復帰もあり得るだろうか。もともと民主党は環境政策に積極的である。

  
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