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2021年1月12日

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李 智雄 (り・ちうん)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト

1976 年韓国生まれ。東京大学経済学部卒業、ボストン大学大学院修士課程修了。経済学博士。韓国陸軍士官学校陸軍中尉・専任講師、東京大学客員准教授、国際大学講師、ゴールドマンサックス東京・ソウルを経て、2014年から現職。著書に『故事成語で読み解く中国経済』(日経BP 社)。

21年は具体的な目標達成より
今後の出発点という印象

 あらためて2019年12月31日の2020年の新年の挨拶を読み返すと、2020年は貧困への勝利をおさめることが「2020年は貧困脱却の堅塁攻略戦で決勝する年でもあります」と表現され、明確な目標としてあった。だが、2021年は特に明確な目標があるというわけではないように見える。2049年までの長い道のりの中の最初の一歩を着実に踏み出そう、ということなのだと筆者は理解している。

中国人民政治協商会議 全国委員会 習近平氏が演説(Xinhua/AFLO)

 その中国だが、新型コロナウイルスの影響からいち早く抜け出しているとはいえ、輸入症例含め、新規感染者がゼロになったわけではない。北京市など一部の都市では春節(2月12日、連休は2月11~17日)に帰省せず北京にとどまることを奨励している。具体的な方策は明らかではないが、他地域から北京に戻った場合、一定期間隔離を要請される可能性も否定は出来ない。

 さらにいえば中国経済は他国と比べて相対的に早く回復しているものの、新型コロナウイルス発生前と比べてその成長率はまだ低い。2021年は建国100周年である2049年に向かって歩み始める年でもあり、2020年同様、経済サポートは継続するだろう。それは、上述の農村部向けの家電・自動車の補助という消費刺激策に加えて、2020年にも行った道路や鉄道を中心としたインフラ投資が含まれていくと考えられる。

 ただし、不動産開発投資の原動力となっていたと思われる貧困脱却という目標はすでに達成されている。2020年中にマクロ経済統計の中で最も堅調であった不動産開発投資(1~11月の伸び率は前年比6.8%増と固定資産投資全体の前年比2.6%増を上回っている)は減速すると考えられる。

 また、家電・自動車以外の消費が伸び悩む可能性もありそうだ。中国の失業率は、新型コロナウイルスの影響を受けて2月には6.2%まで上昇したものの、直近の11月は5.2%と2019年12月と同じ水準まで低下している。その意味で、消費を支える雇用環境に問題はないように見える。

 だが問題は所得だ。経済成長率が鈍化しているにも関わらず雇用環境が大きく悪化していないということは、企業が雇用を必要以上に抱え込んでいる可能性がある。その分、足元の所得も、今後の将来所得に対する期待値も低下している可能性があり、それが、補助がつかない家電・自動車以外の消費の伸び悩み(中国の他のマクロ統計と比べて)となって現れる可能性があると筆者は考えている。

 いずれにせよ、2021年の中国経済は、新型コロナウイルスという脅威を乗り切り、次なる百周年である建国百周年に向けた、「輝かしい門出」を目指すものである。経済成長率も安定的に運営を目指していくことが予想される。その安定的な成長率とは、7~8%のプラス成長と、世界の平均成長率のほぼ倍と、大きく上回るものであろう(世界銀行は1月5日最新の世界経済見通しを発表、2021年の世界経済の成長率を4%、中国の成長率を7.9%と予想している)。こういった目標に対し中国政府がどのように経済を運営していくかに着目すべき1年となりそうだ。

  
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