2024年4月18日(木)

Wedge REPORT

2021年2月5日

──経済活動には30年周期のバイオリズムがあって、2020年以降はアップの時期に入るのか? (明治維新から日露戦争=1870~1900年、西洋列強に伍する1900~30年、昭和敗戦と復興=1930~60年、高度経済成長からバブル崩壊まで1960~90年、失われた30年=1990~2020年)

渋澤 今の企業で考えてみると、社員数が最も多いのはバブル入社組だ。SDGsが達成目標のターゲットとしているのは2030年。この時代、役員以外、今の50代は会社に残っていないであろう。ある経営者に言わせれば「粘土層」がなくなることで、風通しが良くなり、コスト構造も大きく変わる。

 ここに期待が持てる日本がある。昭和の時代は「メイド・イン・ジャパン」で、あまりにも成功して、バッシングされた。平成時代は「メイド・バイ・ジャパン」になってある程度うまくいったが、バッシングから〝パッシング〟となり、結果として自信を喪失して、リスクをとれなくなった。

 では、令和の時代はどうか。リードする立場となる「ロストジェネレーション」と呼ばれる現在の40代には、過去の成功体験という呪縛がない。ここにこそ、新しい成功体験を作れる可能性がある。「メイド・ウィズ・ジャパン」だ。20~30代という人口的にはマイノリティだが、デジタルネイティブであり、子どものころからインターネットに常時つながっている世代。インターネットには国境がない。日本で暮らしながらも世界とつながっているというスイッチが入れば「メイド・ウィズ・ジャパン」の主役になる

 例えば、インドネシアは年齢中央値29歳で、日本の倍の人口がいる。インドは13億人で年齢中央値28歳。アフリカ大陸54カ国は13億人で年齢中央値は20歳だとされる。こうした新興国の若手たちは何を求めているか? 仕事に就いて生計を立てることだ。経済成長の伸びしろがあることはもちろんだが、新興国には社会的課題が多い。この解決策がSDGsだ。新興国の社会的課題を解決しながら、その国の経済成長を助けることができれば、「日本は大切なパートナー」という関係性を作ることができる。パートナーとは「いなくなっては困る」存在だ。これならば、国内の人口が減っても豊かな生活を送ることができるはず。これが、「メイド・ウィズ・ジャパン」だ。

 最後に、日本の新しい成功体験に向けて、何が一番の阻害要因となるか指摘しておきたい。禁止すべき3つの言葉だ。①前例がない(10年後から振り返ったときに、たくさんの前例を作ったことが大事ではないか)、②組織に通らない(自分がいいと思っていれば、通すことが仕事だ)、③誰が責任取るんだ(それは当事者、上司、経営者である。他に誰がいるのか)。

 この、たった3つの言葉を禁止すれば、日本の企業、官庁、教育機関にある、人材という最大の財産をフルに活かすことができるだろう。現状維持と持続可能性を混同してはいけない。世界は常に変化している。ダーウィンが言うところの適者生存と同じだ。渋沢栄一が「大正維新」を説いたように、状況に流されるのではなく、変化することが大事だ。原点回帰とは昔に戻ることではなく、未来に向けてトランスレーションしていくことだ。

Wedge2月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■資本主義の転機 日本と世界は変えられる
Part 1       従業員と家族、地域を守れ 公益資本主義で会社法を再建
Part 2       従業員、役員、再投資を優先 新しい会計でヒトを動機付ける       
Part 3       100年かかって、時代が〝論語と算盤〟に追いついてきた! 
Part 4     「資本主義の危機」を見抜いた宇沢弘文の慧眼
Part 5       現場力を取り戻し日本型銀行モデルを世界に示せ    
Part 6/1    三谷産業  儲かるビジネスではなく良いビジネスは何かを追求する    
Part 6/2    ダイニチ工業  離職率1.1% 安定雇用で地域経済を支える   
Part 6/3    井上百貨店  目指すは地元企業との〝共存共栄〟「商品開発」に込める想い       
Part 6/4    山口フィナンシャルグループ  これぞ地銀の〝真骨頂〟地域課題を掘り起こす
Part 7       日本企業復活への処方箋 今こそ「日本型経営」の根幹を問え

  
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◆Wedge2021年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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