子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年9月12日

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 生保の担当者とすると、「進学できるなら働けるはず」「短大に通いながらアルバイトをせよ」となるだろうが、由梨自身も障害(手帳を申請中)を抱えている状況で、通学とアルバイトの両立はとても負担が大きくできそうもない。

 担任の教員は、「夢を求めて進学することが2~4年先の自立へ向けた確かな道だと思うのですが、生保家庭の子が大学や短大、専門学校に進学することは贅沢なのでしょうか?」 と疑問を投げかける。

 ある市の生活保護担当者はこう説明する。「奨学金を収入としてみなすために保護費が削減されるのではなく、18歳を過ぎると、現行の保護制度上、 その子も働いて生活費を稼ぐ対象として見られているため、被保護世帯の対象者から外れることにより、母親の保護費が減る」。

 しかし、このケースは、一時的な社会的コストの抑制によって、貧困の再生産を促し社会の生産性を低下させるという意味で、長期的な社会的コストを増大させ、社会的ベネフィットを損ねる典型的な例である。結果として社会を弱体化させていると言えないだろうか。しかも経済的な困難、障害などを持つ若者たちが 自立しようという意欲を失わせる制度的な欠陥とも言えよう。

 事実、国の社会保障審議会でも、大学進学と生活保護制度について、現状の生活保護行政が批判をうけている。

社会保障審議会(生活保護基準部会 H24.5.8)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000029t60-att/2r98520000029ta1.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002cdt7.html

 では、生活保護受給世帯とはどのような家族なのか。子どもたちに焦点を当てて考えたい。

不登校の発生するリスクが高い
生活保護世帯

 板橋区が2006年度に行った調査によると、生活保護受給世帯の子どもは11.58%だったのに対して、生活保護・就学援助のいずれも受給していない生徒の発生率は2.4%である。被保護世帯の不登校発生率は安定した家庭の4.8倍であり、飛び抜けて高い(板橋区2006年)。後述の文部科学省の調査からも推測できるが他の多くの調査でも、不登校の背後に貧困があるというエビデンスは少なくない。

 埼玉県立H高校の2004年度入学者は199人(定員200人)だったが、3年後に卒業した生徒は113人だった(中退率43%)。中退者の多さにも驚くが、その入学者のうち、中学で不登校を経験した生徒は41人(入学者の21%)だった(100日以上の不登校者も17人)。そして不登校者のうち、35人が中退していた(85%)。

 H高校は県内の最底辺校で、生活保護世帯の多さや授業料の減額免除率(当時)が30%を超え、一人親世帯や貧困層の多い学校の一つだった。

 貧困の中で疲弊する親や、ネグレクトなどで子どもに必要な食生活をはじめとする日常生活を送らせることができないということが、不登校そして高校中退の背景の一つにあることがわかる。

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