全体的には易化。一方開成・麻布などでは
読解力・作業力を求める問題が増加
コロナ禍で行われた2021年度の中学入試は、全体的に易しくなっているように感じました。どの学校も塾で習う範囲から外れることなく、基本的な問題や定番の問題が目立ちました。恐らくコロナで十分な受験勉強ができなかった受験生への配慮ではないかと思います。
ところが、一部の男子難関校では、かなり手の込んだ問題が出題されました。例えば開成中の算数入試は、前半はかなり易しめの問題が並びましたが、最後の大問だけ難問を叩きつけてきたのです。ゲームのルールに基づいて解いていく問題は、問題文に書いてある複雑な条件を正確に理解し、地道な手作業をしながら答えを導いていくという非常に根気のいる問題でした。
知識面から見れば易しくなっていますが、読解力や作業力といったその場で考える力が問われる問題だったと言えます。このような試行錯誤系の問題は、麻布中や駒場東邦中などの他の男子難関校でも見られました。
こうした問題を解くために必要となるのが、次の3つの力です。
➀処理力(素早く解く力)
②読解力
③作業力(試行錯誤する力)
ただし、学校によってどの力を最も重視しているかは異なります。例えば開成中は①②③の力をバランスよく求めますが、麻布中や駒場東邦中は③の作業力を重視する問題傾向にあります。一方、慶応中等部は①の処理力を求める問題がほとんどで、③の作業力はさほど問われません。このように学校によって求める力は変わってくるのです。
これからの学習は「何を習うか」ではなく「何をどのように学ぶか」
では、こうした力をどのように身に付けていけばよいのでしょうか?
従来の受験勉強は、塾で教わった知識や解法を覚え、それを定着させるために、何度も類題を解いて頭に叩き込ませるといったものでした。基本問題であれば、それで十分対応できることでしょう。
しかし、「なぜそうなるのか」という納得とともに理解をしていないと、少し問題の傾向が変わっただけで途端に分からなくなってしまいます。そうならないためには、知識を覚えるときは「なぜそうなるのか」という理由や因果関係までしっかり理解しておく、公式や解法を覚えるときは「いつどんなときに使えるのか」をきちんと把握しておくようにしましょう。
また、近年、難関校が出す思考系の問題は、とても複雑な条件整理が必要だったり、手を動かしながらでないと答えが出てこなかったりするような作業力が必要なものが増えています。こうした問題に立ち向かっていくには、日頃から書くことを面倒くさがらないことです。「考えることは書くことだ」ということを習慣づけるようにしましょう。
さらに大事なのは、「塾に教わりにいく」という受け身の姿勢ではなく、「一問でも多く解けるようになるぞ」という前のめりの姿勢を持つことです。「教わる」よりも「解きに行く」。この姿勢が身に付いていないと、いざ入試で難問を前にしたときに、立ち向かっていくことができません。