2月24日、バイデン大統領は重要部材のサプライチェーンの見直しを命ずる大統領令に署名した。100日以内に半導体、大容量バッテリー、医薬品、レアアースの重点4品目についての見直しを求めている。この作業は中国を標的にしたものでないと説明されているが、過度な中国依存を脱却し、緊急時にも耐え得る強靭なサプライチェーンを構築し、安全保障上の懸念を払拭することを目指していることは明らかである。その手法としては国内生産の増強、戦略備蓄、緊急時の生産拡大余剰能力の確保、同盟諸国との協力の組み合わせが考えられているようである。半導体について言えば、台湾や日本、韓国との連携が当然視野に入って来るであろう。
これに関連して、2月26日の英フィナンシャル・タイムズ紙では、同紙イノベーション担当エディターのジョン・ソーンヒルが、台湾の半導体受託生産企業(ファウンダリー)であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.:台湾積体電路製造)の躍進振りを描写した上で、TSMCが米国か中国かを選択することを余儀なくされつつあると述べている。
TSMCの半導体は、アップルのiPhone、医療器具、F-35戦闘機を動かし、世界の半導体売上高の55%を占めている。その先端技術は、他企業が追随することを今のところ許さない状況だ。
この驚異的な企業であるTSMCをはじめとする半導体製造企業が民主主義の台湾で発展したことは祝福すべきことであり、米国はじめ西側諸国はこれを資産として守るという姿勢が必要である。フィナンシャル・タイムズ紙の論説はTSMCにとっての懸念は米国と中国の間の地政学的な緊張であるが、この両者の間でのTSMCのマヌーバーの余地は小さくなって来ていると書いている。実体的にどういうことがあるのか必ずしも分からないが、西側諸国がTSMCを失うことがあってはならない。最先端半導体の供給源を失うことは壊滅的影響を持ち得る。
TSMCの問題もその関連で検討されねばならない。TSMCはトランプ政権の圧力もあって既にアリゾナ州に進出することを決定し、現在、工場建設を進めているが、TSMCを繋ぎ止めるためには、それがビジネスの観点から見ても合理的であるように工夫される必要があるのであろう。更には、TSMCという一企業にとどまらず、台湾全体を安定したサプライチェーンに組み込むとの観点に立ってTPPに米国が台湾とともに参加する可能性が探求されるべきではないかと思われる。
日本との関連でいえば、TSMCは、茨城県つくば市に、日本企業と提携して研究開発の拠点を設立することを決めている。米国アリゾナ州の工場建設も考えると、今後、日台米の連携が、この地政学上の優位を決め得る半導体分野で行われることが予想される。
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