世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年4月8日

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 バイデンはトランプの政策のいくつかを修正しているが、移民政策はその最たるものである。トランプがメキシコ国境沿いの壁の建設に象徴されるように、厳しい移民政策を掲げたのに対し、バイデンは「もっと人間的な」移民政策を選挙公約に掲げ、移民に関する諸政策の再検討を命じた。その結果米国に不法に滞在する移民を合法化する、米国に子供として不法入国した18歳以下のいわゆる「夢見る者たち」に市民権を与えることとした。

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 米国の移民問題は複雑化している。第1に、当初は移民のほとんどがメキシコ人であったのに対し、今では「北の三角地帯」と言われるエルサバドル、グアテマラ、ホンジュラスからの移民が大幅に増えている。第2に、以前は単独の個人がほとんどであったのが、家族と子供の移民が増えている。第3に、圧倒的多数の者が、人道的保護が必要ないにもかかわらず難民と称して入ってこようとするようになった。主要な点を挙げれば、こうした事情がある。したがって、今米国の移民対策は多岐にわたり、特に難民対策が中心となっている。

 移民問題は、米国政治の重要課題となっており、米国の政治を分断するイシューの一つになっている。民主党、特に左派が移民に寛容であるのに対し、共和党は厳しい態度をとっている。

 米国の世論も移民問題に多大の関心を持っている。エマーソン大学が2019年7月30日に発表した世論調査では、2020年の大統領選挙で最も重視する項目は何かと問うたところ、移民政策が経済政策を抜いて一位であった。これはトランプがメキシコ国境沿いでの壁の建設を大々的に宣伝したことも関係しているが、移民問題が米国民の大きな関心事になっていることを示すものとも言える。

 移民・難民問題は2020年の大統領選挙に重要な問題であったと同様に、2022年の中間選挙でも選挙イシューになるものと見られている。共和党は移民、難民問題を重点的に取り上げ、中間選挙で勝つつもりのようである。米国の移民・難民問題は単に社会的問題としてのみならず、米国の重要な政治問題としてみていく必要がある。

 バイデンはいわば親移民的政策を実施しようとしているが、それをあてにして多数の中米人がメキシコとの国境に集結しており、危機的状況になっている。

 バイデンも堪り兼ねて、移民に「来るな」と言わざるを得なくなった。エコノミスト誌3月20日号の解説記事‘Joe Biden faces a humanitarian crisis at the southern border’は、「バイデンにとって南の国境は急速に道徳的、政治的泥沼になりつつある」と指摘している。その通りであり、バイデンにとって移民・難民政策は困難な挑戦であると言える。

  
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