2024年12月4日(水)

食の安全 常識・非常識

2021年4月8日

 畝山部長はこう話します。「すべてがうまく行く方法などありません。各種のリスクのトレードオフをどうするか、環境負荷低減を図った時に、安全性確保とどこで折り合うか。そもそも、今の日本人の食生活に問題はないのか? さまざまな要素を協議し合意し、それを踏まえて、政策は推進されるべきではないでしょうか?」

素人受けはしても、プロには通用しない

 結局のところ、見栄えの良い素人受けのする言葉が並ぶハリボテが、「みどりの食料システム戦略」の中間とりまとめ案です。その象徴が、荒唐無稽な有機農業面積25%なのです。食や農業に詳しければ詳しいほどしらけた気分になり、プロフェッショナルは「そんな計画、ほっとけば」という気分になっている、というのが私の取材の感触です。

 なにせ、農水省はこれまで数々の計画をぶち上げ、達成できないまま知らん顔をしてきた “前科”があります。

 わかりやすいところでは、国産小麦や米粉の振興。私も小麦関係者に指摘されてやっと思い出しました。2010年、「平成22年食料・農業・農村基本計画」で、自給率を上げるために国産小麦生産量を88万トンから180万トンに、米粉用米を0.1万トンから50万トンに増やすという2020年の目標が設定されました。実際の2020年の数値は、国産小麦の生産量が70万トン、米粉用米はわずか2万8000トンです。国産小麦は、需要はあるものの生産が追いつかないのが実情です。

 それにしてもどうして唐突に、こうした計画案が出てくるのか。次回、「EUを見習え」の問題点に迫ります。

<参考文献>
農水省・みどりの食料システム戦略~食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現~
【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~
有機食品の検査認証制度
厚労省・食品中のデオキシニバレノール(DON)の規格基準の設定について
Mruczyk K et al. Comparison of deoxynivalenol and zearaleone concentration in conventional and organic cereal products in western Poland. Ann Agric Environ Med. 2021 Mar 18;28(1):44-48.
Ochmian I et al. The impact of cultivation systems on the nutritional and phytochemical content, and microbiological contamination of highbush blueberry. Sci Rep. 2020 Oct 7;10(1):16696.
Serrano AB et al. Emerging Fusarium mycotoxins in organic and conventional pasta collected in Spain. Food Chem Toxicol. 2013 Jan;51:259-66.
日本有機農業研究会
農水省・平成22年 食料・農業・農村基本計画について
農水省・麦の需給に関する見通し

  
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