田部康喜のTV読本

2021年5月2日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(fizkes/gettyimages)

 「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ制作・フジテレビ系、毎週火曜よる9時)は、松たか子が演じる、住宅建設会社の社長をめぐって、3人の元夫たちが丁々発止と「言葉のゲーム」を繰り広げる、ユニークなドラマである。

 脚本の坂元裕二は、過去にも「Mother」(2010年)、「anone」(2018年)のドラマのほか、映画でも「世界の中心で愛をさけぶ」(2004年)、「花束みたいな恋をした」(2021年)など、ドラマと映画の新たな領域を開拓してきた。

 今回のドラマもまた、大豆田とわ子(松たか子)の元夫3人とのそれぞれの会話、元夫同士の会話、また、元夫たちに現れる新たな恋人の可能性を秘めた女性たち……。「言葉のゲーム」を楽しんでいるうちに、大豆田とわ子がピリオドを打つようにして登場して、あっという間に毎回「カット」である。

 ドラマの語り手は、伊藤沙莉(いとう・さいり)である。ドラマは展開、というかどんでん返しの連続である。しかも、毎回ドラマの冒頭に、その回の見どころともいえるサマリーを語ってみせる。

 第3回「全俺が泣いた~器の小さな男の恋」は、とわ子(松)の二番目の夫である、ファッションカメラマンの佐藤鹿太郎(かたろう・角田晃広)の物語である。ちなみに、一番目は、脱サラして友人のレストランを手伝っている田中八作(松田龍平)、三番目が弁護士の中村慎森(しんしん・岡田将生)である。

 建築士だった、とわ子は経営者が体調を悪くしたために、後継者に指名されて社長になった。3人の元夫との出会いは、社長になる前のことである。

 元夫3人との出会いと恋、そして結婚はすべて美しい物語である。そして、3人の元夫は今もとわ子を思い続けている。約束しているわけではないのだが、最初の夫が手伝っているレストランに、とわ子と3人の元夫はよく出会っている。

 三番目の夫である、佐藤鹿太郎(角田)はもともとスキャンダルを追う、週刊誌のカメラマンだった。タレントの出入りするダンス教室に申し込んで、張り込みを続けるときに、とわ子に出会った。佐藤は自分の職業をファッションカメラマンと嘘をついた。ダンス教室にも真面目に通うようになって、社交ダンスの腕も上げた。そんなときに、とわ子から大会にふたりで出てみないか、と誘われる。大会は台風のために中止になったが、練習場でふたりで踊ったあとに、佐藤はとわ子にプロポーズする。

 「あなたを持ち上げることはできませんが、支えることはできます。そして、ひとつだけ嘘をついていました。ファッションカメラマンではないのです」

 とわ子はプロポーズを受けて、こういうのだった。

 「わたしもひとつ秘密を隠していました。わたし一度結婚して、離婚しているんです」

 佐藤は、とわ子との結婚を機会にして、本当にファッションカメラマンを目指して、とうとう夢を実現した。

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