都会では味わえない絶景
それにしても、すばらしいのは、そのロケーションだ。国道128号線沿いで、そのすぐ向こうには、外房の海がひろがっていた。店の広い窓からは、暮れていく海を眺めることができる。暖かい日なら、外のテラスでいただくランチは解放感で満たされそうだ。
私たちが訪れたのは、ちょうど沖縄を台風が通過しようかという日で、白い波頭が立つ雄大な海の眺めを見ることができた。
ちょっと遠かったけど、来てよかった。どんなに豪華なレストランでも、正面にはどこまでも広がる海、背には山なんて景色は、都会では逆立ちしたって望めない。
目指すは、故郷の豊かな食材をアピールできる食堂
主人の小野薫さんは1968年、この鴨川で生まれたが、その後、長く東京に暮らし、レストラン業界のPRの仕事に携わってきた。軽井沢を舞台にし、予約制の有名シェフによる特別ディナーを町中で開き、町おこしのユニークな催しとしても注目される「クーカル」の広報をしたこともある。「クーカル」が食通たちに認知されると、今度は、これを奈良や長野でも展開する中で、自治体や生産者の人たちとも交渉する機会があった小野さんは、彼らの「地元の食材への愛情や誇り、これを売りたいという使命感を肌で感じた」。
そうして働くうちに、ふと彼女の中に疑問が芽生えた。
「有名シェフたちは、みんな食材への関心が高く、食材探しに余念がない。そして、わざわざ東北や九州の食材を使うのに、なぜか、千葉県の食材は意外なほど使われていない。海の幸から山の幸、いろいろな野菜まで、これほど食材の豊かな地域はないのに、どうしてだろう? なぜ、発信力のあるシェフたちにリンクできないのかな」。
そこで自分の足で歩いて、故郷の魅力的な食材探しを始める中で、「千葉県は豊かな供給地なのに、供給地ならではの弱さで、食文化の発信地になりきれていない」と実感した小野さんは、何年もの準備期間をへて2011年4月、千葉県のいい食材を使ったスイーツのネット通販を始めた。