2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2021年7月16日

OECD上位国に負けない
東京都のGDP

 つまり、ポストコロナの世界においても、依然として東京圏への集中圧力が弱まるとは考えにくい。また、東京圏が過大かどうかも客観的な証拠がない状況下で、リモートワークの普及にみられるような最近の変化が「混雑の不経済」を緩和する可能性があるのであれば、東京一極集中を止めるのは至難の業である。のみならず、東京一極集中を強制的に止めることは、将来の日本社会を考えた場合、損失をもたらすかもしれない。むしろ、これからの日本で考察すべきは、東京一極集中を〝活用する政策〟ではなかろうか。

 近年、日本の生産性の低さが喧伝され、例えば、19年の一人当たり国内総生産(GDP)を国際比較すると、経済協力開発機構(OECD)諸国の中で上位のルクセンブルクやスイス、北欧諸国の半分程度しかない。しかし、東京圏の中心たる東京都だけに限ると、一人当たり県内総生産は、08年~18年の期間は750万~800万円の間を推移しており、日本の一人当たり国内総生産の約2倍である(東京都「平成30年度都民経済計算年報」)。つまり、東京都だけであれば、一人当たり域内総生産はOECD諸国の上位勢に相当するのである。

 もちろん、東京都は、近隣からの通勤労働者やさまざまな資源の集中のおかげで高い総生産を実現しているわけであるが、日本経済のけん引役として重要な役割を担っていることは間違いないであろう。だとすれば、地方創生の一端として東京都に人や企業が集まることを制限することで一極集中を解消しようとする方策は、東京都の東京圏、ひいては日本全体のけん引役としての力を大きく削ぐことになり、日本の活力を低下させてしまう。

 すでに人口減少に直面している日本が活力を維持するにあたっては、東京の持つけん引役としての〝機能〟を守り、いかに〝強い経済〟を実現させていくかが重要となる。そのためには、人が東京に集まることを阻害するのではなく、住居不足、混雑の不経済など、それによって生じるデメリットを解消していく政策誘導が必要である。

 そのうえで、東京自体の災害へのレジリエンス(抗堪性)を高めることはもちろんのこと、災害リスクへの対策として、東京と並びうる集積地を育成し、人や企業の自発的な選択の結果としての東京一極集中の解消を目指すべきである。その有力な候補地は、経済規模からしても大阪となるだろう。ワクチンの普及などにより、いずれは新型コロナも収束していく。そろそろ、コロナ後の東京の未来、また第二の東京となり得る地域の強化に向けた政策を考える時期に来ている。

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■あなたの知らない東京問題 膨張続ける都市の未来
Part 1         新型コロナでも止められぬ東京一極集中を生かす政策を
Part 2         人口高齢化と建物老朽化 二つの〝老い〟をどう乗り越えるか
COLUMN    〝住まい〟から始まる未来 一人でも安心して暮らせる街に 
Part 3         増加する高齢者と医療需要 地域一帯在宅ケアで解決を 
Part 4         量から質の時代へ 保育園整備に訪れた〝転換点〟 
CHRONICLE    ワンイシューや人気投票になりがちな東京都知事選挙  
Part 5         複雑極まる都区制度 権限の〝奪い合い〟の議論に終止符を 
Part 6         財源格差広がる23区 将来を見据えた分配機能を備えよ
Part 7         権限移譲の争いやめ 都区は未来に備えた体制整備を

  
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