7月10日付の英Economist誌が「中国の共産主義者がテク企業を統制下に置く。滴々(ディディ)への攻撃は共産党が統制のためにどれだけ高いコストを払うかを示す」との社説を掲載し、配車会社への介入問題を論じている。
中国の配車会社であるディディ・グローバルは、最近、ニューヨーク証券市場に上場した。ディディは、中国のスーパースター企業で、Uberよりも多い4億9300万人の利用者、1500万人の運転手を有し、ブラジルとメキシコに支店を持つ。ディディは、6月30日、世界中の投資家からの資金を集め、企業価値を680億ドルにする株式上場を行った。
しかし、上場直後の7月4日、中国共産党の規制当局は、ディディが個人データの収集規則に違反したとして、中国でのアプリ店からディディを締め出した。これはディディの株式価格を20%下げる結果をもたらした。
中国の規制当局がテク企業の海外、特に米証券市場への上場を問題であると考え、規制を強めようとしている。今度問題になっている滴々(ディディ)は、米国のUberと同じような配車事業を行っているが、ここにはソフトバンクやトヨタが出資している。中国の規制当局の規制強化を受け、滴々の株価はニューヨークで20%以上減価したが、ソフトバンクやトヨタはかなりの損失を出したと思われる。
今度の中国の規制強化の動きがどうなるのか、やっていることがよくわからないので評価しがたい面があるが、中国テク企業が海外で上場して資金調達することには今後大きなブレーキがかかり、海外の投資家も中国テク企業への投資に慎重になることは確実であると思われる。中国へのお金の流れが減ることが中国経済にどういう影響を与えるかと言えば、中国の経済成長率を押し上げる方向に働くとは思われない。しかし、その影響をいま測定することは難かしい。
中国がなぜこういうことをしているのかといえば、中国共産党が全般的に統制強化を進めており、テク企業の株式上場にもその統制を及ぼそうとしているからだろう。
米国でも中国企業をたとえばニューヨーク証券市場から締め出すべしとの議論が投資家保護の観点から提起されている。中国が別の視点から海外証券市場での中国企業の上場を抑えるということになれば、資本市場での中国と米国のいわゆるディカプリングは深まっていくとみておいてよいのではないかと思われる。
中国の経済は少子高齢化の人口問題、水問題などの環境問題など多くの問題を抱えており、共産党の権力強化以上にすべきことがあるのではないかと思えるが、1992年の鄧小平の南巡講話のような政策転換は、今の習近平には望めないと考えている。鄧小平の改革開放は西側との協調路線でもあったが、習近平にはそれを望めないだろう。
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