2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2021年8月11日

 この状況について、青山氏は「都知事を支持する政党が多数派を擁していたことは歴史的に見てもほとんどなかった。それにより都政が行き詰ったことはない」と指摘する。社会・共産が支援した美濃部亮吉氏の1期目に行われた1969年の都議選時には自民が多数を擁しており、青島幸男氏(1995~99年、1期)へはそもそも応援する都議会議員は一人もおらず、石原慎太郎氏が99年に都知事選初当選を果たした際も応援した都議会議員は少なかった。

 「中央政府と異なり、自治体は首長と議会がともに直接選挙によって選ばれるいわば二元代表制となっている。首長と議会の緊張関係は想定されたもので、国会のように内政や外交、軍事での思想的な対立で政策形成過程で調整できない状況となるのが少ないことも特徴」と解説する。こうしたシステムであるからこそ、五輪会場を活用したまちづくりは、都知事がしっかりと方向性を示すこと、都議会による働きかけと議論の活性化、都民が求める環境の要望と、多方面から動く必要がある。

かねてから続く〝格差〟への対応

 魅力の拡大は不可欠だが、東京が抱える社会課題を解決することも不可欠だ。東京都として見過ごしてはならないものが23区内および個人間の「格差」だという。

 23区の面積に占める道路面積の割合を比べると、最も大きい中央区が29.2%、台東区が26%であるのに対し、大田区は12.5%、杉並区は13.6%となっている(『東京都道路現況調書 平成30年度版』と『特別区の統計』を基に青山氏が計算)。また、公園面積率においても江戸川区が15.6%、千代田区が14.7%に対し、豊島区が1.7%、中野区が3.0%だ(『公園調書(2020年4月1日現在)』と『特別区の統計』を基に青山氏が計算)。

 道路と公園は、災害時の避難や災禍の広がりを防ぐために、一定程度は必要となってくる。中野区は道路率と公園率ともに低い状態となっており、青山氏は「密集して建物や店舗の配置が長いアーケードの商店街といった一つの特徴や魅力となっている部分もあるが、まちとしてのインフラや危機管理も考慮し、適切な配分を考えなければならない」と指摘する。

 また、個人の格差については、「資産家ではなく、困った人や働きたい人が都市へ入ってくるのが基本的な動き。そのため、都市部は就労や貧困、格差への対策が常に求められている」と現状を解説する。東京および東京圏への一極集中が進行を続ける中、就労や貧困への対応はより一層求められ、独自の政策も必要になってくるという。

 そうした中で求められる意識変革が「多様性」だと青山氏は主張する。「高齢化が進む中で、今後の社会保障政策は『高齢者がどう働くか』になる。雇用形態や働きからの多様化が求められる。また、外国人に対しても、『外国人誘致』と掲げながら都庁で働く外国人はほとんどいない。アメリカのニューヨークを見ると、市役所で日本人が何人も働いている。活動しやすい環境を作る必要がある」と話す。

 「コロナ禍の五輪」という非常事態と祭典が一度にきたと言えるが、その世界的なイベントが終わったことに満足せず、いかに生かし変えていくことが必要となっている。

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