2024年4月23日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年10月19日

 国際事情では、海外諸国で自給率が100%を超える国・地域には二つのタイプがある。

 第一のタイプは、穀物・油糧原料の輸出を主力とするアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの新大陸・大規模農業で、こちらは、日本の参考にはならない。さらに、加盟国に収入保障や就農支援などを講ずる共通農業政策(CAP)で輸出を振興しているEUのスペイン、フランスなどもあり、こちらは、ぜひお手本としたい。

 かつてのEU(EC時代も含む)は、課徴金での輸入制限と輸出補助金で国産農産物の価格維持、輸出振興を図ってきた。この政策は、とかく過剰生産を招き、牛乳を川に捨てる、小麦に着色してエサに回すなどで価格・市場の歪曲が指摘されていた。だが、現在のCAP下で、いまや国際市場でも指導力、影響力を持っている。

 二つ目のタイプは、参考にできるデータが「穀物自給率」しかないが、発展途上国のうちの自給率が高い国である。ルワンダ、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、ナイジェリア、北朝鮮などで、穀物・ナタネやベニバナなど油糧種子の輸入が満足には行えない、経済力がないためやむを得ず国内農産物で賄っている、国民に十分な栄養を供給できない国々である。こうした国々について、自給率が高いからといって、幸せなことだといえるだろうか。

 このような背景から、08年1月22日に起きた毒入り餃子事件と食料自給率の関係を見ていきたい。生協が中国から輸入した餃子を食べて食中毒になった。メタミドホス(農薬)の意図的混入が原因である。これに対し、日本生協連は、当面の輸入禁止と第三者委員会の検証を行った。第三者委員会は、「国産定着の機会にすることが大事」と提言。

 そこで、餃子を輸入から国産に切り替えるとカロリーベースでの食料自給率は上がるのかということであるが、答えは、「かえって低下させる方向に働く」だ。

 国内生産に切り替えると、原料のうち、①小麦(粉)は輸入品、②豚肉はエサが輸入のためカロリー自給率は1/7に低下する、③しょうが、にんにくなどはほとんどカロリーがないので国産にしてもカロリー自給率向上には寄与しない。現在の自給率計算式では「低下方向に作用」が結論となる。

必要となる食料安全保障の視点

 それでは、食料・農産物の輸入を規制して自給率を向上させることはできるだろうか。

 「否」、世界貿易機関(WTO)体制下ではありえない。もはや、時代は、“No import ‐ No export”から “Import some - Export some”に移行している。

 わが国にとって残されている選択肢は、EUのように、「価格は市場競争に委ね所得は経営政策などで対応する」の方向に政策を転換し、人口・経済が成長する国・地域への輸出を盛んにして自給率を高めることが王道だと考える。

 食料自給率計算式の分子には輸出用の生産が含まれることを再度、想起されたい。輸入が途絶えたときには、それまでの輸出分が国内供給に振り替わるのは常識である。


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