世界に目を転じると、北欧のノルウェーは総人口530万人余りの国家である。日本でいえば、千葉県の629万人(2020年国勢調査)よりも人口は小さい。しかし、ノルウェーは世界的に知れ渡った先進国であり、「ノルディックデザイン」で有名な工業製品や海産物、ウインタースポーツや先進的福祉国家としての文化や政治・社会は、世界的にも評価されている。1人当たりの国内総生産(GDP)もノルウェーは世界ベスト5に入る経済力を持つ。
総人口数ではなく、そこに住む住民側の視点にそって地域の持続可能性を考える指標を我々は見つけ出していく必要があるのではないか。
なぜ人口指標として高齢化率が示されるのか
地域の人口構造を評価し、比較する場合にもっともよく使われる指標として「高齢化率」があげられる。高齢化率は地域の高齢者(65歳以上)数を当該地域の全人口で除したものである。この高齢化率の指標は人口構造の地域間比較だけではなく、高齢化の推移を概観するために時系列指標としても『高齢社会白書』(内閣府)などに用いられている。
高齢化率は高齢者/全人口であり、高齢者/(若年者+高齢者)であることを意味するから、若年者の減少(少子化)は地域の人口規模を減少させ、高齢化率を高めていくことになる。
この高齢化率が地域の人口構造を評価する指標として用いられる理由としては、まず、指標計算が簡便であることがあげられる。地域の年齢別人口のデータさえ得られれば、直ちに算出可能である。地域の人口に関する統計は5年に1度の「国勢調査」だけでなく、「住民基本台帳報告」や「人口推計」で毎年・毎月ベースで把握可能である。
もう一つが、扶養負担としての指標である。もし高齢者が退職して働かない人口とすると、高齢化率はその地域で扶養し、資源配分をしなければならない人口の比率を表す。したがって、高齢化の進んだ地域は、生産から離れたとみなされる人々が多く、その人々を扶養するべく、地域の生産物を分配しなればならない比率が高い、すなわち現役世代の負担も大きいということにつながる。
これらの観点から、高齢化率という指標は人口学的にも簡便であり、経済学的にもある程度の地域の持続可能性を考える参考になりうる指標であるということができる。
高齢者が貴重な働き手にもなっているという事実
高齢者は退職し、年金を受給する人々であるというのは、あながち間違いではない。しかし、長寿化の進行により法的にも定年を65歳以上にまで延長する政策が推進されている。さらに政府は生涯現役社会を目指して、働く能力と意思のある高齢者が可能な限り就業を継続できる環境を整備しようとしている。
実際に65歳以上の就業者数は増加傾向にある。先述の9月16日の発表では、高齢就業者数は、15年連続で増加し、862万人と過去最多になっており、就業者総数に占める高齢就業者の割合も12.9%と過去最高に達している。
この高齢者の就業傾向は主要国の中でも高い水準であるとされている。したがって、高齢化率が暗黙に前提としている65歳以上を非就業、被扶養人口とみなして地域社会の持続可能性を評価することは、人生100年と長寿化した現在の日本にはそぐわないといえる。