世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月16日

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 11月16日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙主席政治コメンテーターのジャナン・ガネッシュが、共和党は、来年の中間選挙のみならず2024年の総選挙等でも圧倒的に有利にあると見なされているが、それでも状況が変わる、あるいは共和党が自滅する可能性もあると説いている。

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 ガネッシュは、バイデンの支持率低下の原因として、アフガニスタン撤退時の混乱、メキシコ経由の移民・難民問題、都市部での犯罪増加、歴史教育を巡る左派の行き過ぎを挙げ、バイデンの不人気の根っこにあるのは、こうした問題が大統領として事態を掌握する力に欠けることを見せてしまったこと、と指摘しているが、その通りであろう。特にインフラ法案の制定までに長時間を要し、それもその原因が大統領の党内の衝突であったこと、つまり自党すらまとめるのに苦労したことで、沈着冷静且つプロ集団を従え迅速に問題を解決するであろうことが魅力であったバイデンのイメージがすっかり崩れてしまった。

 インフラ法はトランプが繰り返し試みたにもかかわらず制定が叶わなかった。しかしバイデンのインフラ法に共和党議員の一部も支持票を入れたのは、バイデンの根気ある交渉力や見解の違う人々も受け入れる人柄がものを言ったのは間違いない。

 しかし、バイデンにはトランプのように国民を熱狂させ、いわば政治的闘志を生み出し、動かす力はない。アメリカの有権者を引っ張るには、時に強引な力の誇示も必要だが、バイデンの魅力は逆に弱点でもある。

 民主党が長く議席を失い続けるとされる背景には、10年に一度の国勢調査後の今年に施行された選挙区再編もある。最低でも2.5議席、場合によっては4~5議席共和党が議席を増やすと分析されている。

 共和党は先の選挙で地方での勢力を伸ばしたが、州知事は27人、共和党が州知事、州の上下両院で多数を占めるtrifectaが23州となった。一方、民主党が3つを握っているのはわずか15州である。これにより選挙区再編だけでなく、民主党に不利になるといわれる選挙法改正が19州で進められている。

 進歩派のやりすぎも民主党のイメージを傷つけている。福祉から教育支援、温暖化対策まであまりに巨額の予算を求め、それがビルド・バック・ベター歳出法案が長期間まとまらなかった原因である。教育問題では、進歩派がサンフランシスコで学校名からワシントン、ジェファーソン、リンカーンを除こうと試みたり、バージニア州でジェファーソンやジョージ・メイソンの名がつく学校名変更したりし、こうした進歩派の行き過ぎが無党派層やバイデンに票を入れた共和党支持者を憤らせ、共和党支持を増やしている。

 一方、共和党の弱点も党や一部支持者の行き過ぎである。例えばゴサール共和党下院議員が進歩派の顔であるオカシオ・コルテスを殺害するアニメを流すという前代未聞の騒ぎがあった。議事堂乱入を巡るトランプの責任を問う弾劾裁判で賛成票をいれた10人の共和党下院議員は党から仕打ちを受けたり、家族も命を狙うと脅迫されたりしている。

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