会社はなぜ、個人事業主化を求めているのか。その原点と本質的な理由とは何か。
そして、目的を実現するには、社員と個人事業主という二択だけなのか。その間に「第三の道」はないのか。「第三の道」によって、労使双方のリスクを軽減し、バランスを取っていくことはできないのか……。ここまでが前回「社員の個人事業主化、その理想と現実」の話である。
次に進む前に、改めて、社員と個人事業主とはどう違うのか。一般論にわたる部分もあるが、「保存版 社員VS個人事業主、全比較表」にまとめてみた。精確な定量化は難しいが全体的にいえば、個人事業主化によって会社が抱え込む主なリスクは、法律面に集中している。一方、社員にとってみれば、メリットもありながら、多様なリスクにさらされることも事実だ。
補完関係と格差
――続いて「格差」について伺います。できる人とできない人、たくさんできる人と少なくできる人の間に、格差がどうしても生じます。これは成果主義に照らして、ある意味で健全といえるかもしれません。
ただ、日本社会の現状をみると、すぐに社会的に受け入れられるかというと、心情的な問題がありますね。そこで、補正や救済手段が必要になってきます。敗者復活ルールや敗者救済体制の整備など、そういったデリケートな部分になります。
谷田千里社長(以下「谷田」) 弱者の話ですが、会社のなかでいえば「補完関係」になります。たとえば、必要な定型業務があって、あまり高度な仕事ができない人はやはり、定型業務をやることになります。その仕事をする人は高い給料をもらうことはおかしいと思います。
もちろん、救済はされるべきですが、できる人とできない人は明確に分かれていますので、できない人はそういう仕事をやればいいのではないかと。たくさんできる人の時間をたくさん使わなくても、代理でやってあげられるようなことをその方々がやれば、補完関係が成立します。経済的に組織が回る。私の中には、それでいいんじゃないかな、という割り切り感があります。
AさんとBさんがいて、Aさんは仕事を取ってきて、Bさんがそのサポートをする。経済学的な合理性がありますから、そこでいわゆる格差が生まれるかもしれませんが、しかたないと思います。弱者の救済という意味では、欧米と一緒で、税金を賄っているのはやはり大半お金持ちの人なので、要するにできる人はたくさん稼いで、その分税金で社会保障を厚くして弱者救済に回せばいいと。
――今仰っていたことは、社会次元ですか、それとも単体企業の次元ですか。
谷田 社会次元です。