中国女子テニス選手の彭帥(ほうすい)さんが11月初め、中国高官による性的暴行を告発した後、一時失踪した事件に対し、台湾でもミニ政党(小党)、「時代力量」の立法委員(国会議員)団が、北京冬季五輪について明確な態度表明を行政院(内閣)へ求める議案をいち早く提出し、存在感を示した。
二大政党制が確立した台湾では、複数の小党が活躍している。台湾独立志向で与党の民進党に近い時代力量や「台湾基進」、台湾独立に反対で、最大野党の国民党に近い「新党」や「親民党」、台北市長の柯文哲氏が率いる中道派の「台湾民衆党」などがある。
うち、小党で立法院(定数113)に議席を持つのは時代力量(3議席)と台湾民衆党(5議席)のみ。南部の高雄市を拠点とし、「左翼台湾独立派」を称する台湾基進は20年の立法院選挙で、長年、国民党系の地元有力一族の指定席だった台中市の選挙区の議席を奪う大手柄を挙げた。しかし、21年10月、住民のリコール投票で議席を失った。
ネットメディアの『上報』によると、小党は多様な民意の反映以外にも、若者の政治参加に道を拓く点で大きな存在価値を持ってきた。民進党もすでに結党から30年以上がたち、人材選抜方法は硬直化しており、無名の若者が同党の政治家になるのは非常に難しい。議員や幹部の二世や超有名人であるか、各派閥の中で抜てきされることが必要だ。時代力量や台湾基進は、政治を志す若者に活躍の場を与えてきた。
両党は、14年に立法院を占拠した「ひまわり学生運動」に参加した学生活動家らが結党した。時代力量は15年に発足し、インターネットによる直接選挙で黄国昌主席ら執行部を選出。翌年1月の立法院選挙では、一挙に5人が当選し、国政で第3党に躍進した。若さあふれる時代力量の伸長は、民進党を刺激。民進党が、ひまわり学生運動世代の若者を大量入党させ、若返りを実現するきっかけとなった。
また台湾立法院独特の「党団協商制度」も、小党に議席数以上の存在感を与えている。重要法案の賛否を、各党議員団の事前の話し合いで決めてしまう法定の制度で、いわば「根回し」の合法化だ。小党はこの制度を通じ、工夫と説得次第で、法案に自党の主張を滑り込ませることが可能となっている。
ただ、小党はいずれも存亡の危機に立たされている。知名度不足や寄付に依存する財務の弱さが大きな原因だが、何より結党の「理念」が大きな問題。例えば、何かにつけ「中華」を強調する新党は、台湾人の間で中国人意識が弱まり、中国との早期統一を求める声がほとんどなくなる中、支持を失いつつある。
『上報』によれば、時代力量は民進党と異なる理念を打ち出せず、埋没しかねないことが最大の弱点だ。結集軸が不明確なため、結党以来、分裂と内紛を繰り返し、支持者と党員が減り続けている。11月半ばにも、北京冬季五輪ボイコットに関する議案を提出した王婉諭氏ら2議員が、「行動時代」を名乗る独立事務所を立ち上げた。
なお小党の中で、台湾民衆党のみは勢いがあり、10月の世論調査で支持率が国民党を上回った。結党の目的は「台湾全体の利益と民衆の最大幸福」とぼんやりしており、むしろ「理念のなさ」が無党派層に支持されているようだ。今後、二大政党に対する不満の受け皿として、安定した地位を確立する可能性もある。
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