需要に合わせて発電できない再生可能エネルギー
電力供給では需要量に発電量が一致しなければ停電する。電気を使いすぎると家庭用ブレーカーが落ちるのと同じである。供給力が不足すればもちろんだが、逆に多すぎても停電する。コロナ禍の英国では需要量が大きく落ち込んだ一方、送電管理者が全ての風力、太陽光発電量を制御することができず、供給過多による停電が心配されたこともあった。
停電を避けるため、その時々の電気の需要量に合わせ、発電所に指示し発電量を調整することが常に行われている。例えば、火力発電所では電力需要が落ち込む深夜には発電量を減少させる。北海道を除き1年で最も電力需要が高くなる盛夏の午後には、普段は利用していない石油火力発電所まで稼働し、電力供給を行う。
だが、問題は風力と太陽光発電だ。天候により発電量が左右されるので、当然需要に合わせ発電することはできない。2021年春から夏にかけ欧州では凪が続いた。20年ぶりと言われるほど風が吹かなかった。その結果、風力発電量が減少し、落ち込み分を補うため天然ガス火力が利用された。しかし、天然ガスの需要が高まり価格が上昇したことから、英国、ドイツなど利用率が低い石炭火力を保有する国は、天然ガス火力の利用も抑制気味にし、石炭火力の利用を進めた(ドイツの発電状況は図-2)。
欧州での天然ガスと石炭供給の主力、南アフリカ炭との価格差は、石炭が最も高くなった時でもカロリー当たり4倍以上開いた(図-3)。二酸化炭素(CO2)が多く排出されようが、温暖化対策に熱心とされる英国もドイツも電気料金上昇を防ぐためには石炭を使うのだ。
再エネ電源導入で招いた停電
再エネからの発電量が不安定なため電気料金に影響を生じることがあるが、さらに停電まで発生させることもある。米カリフォルニア州は、米国で最も温暖化対策に熱心な州だ。CO2を排出しない自動車の販売比率をメーカーに義務付け、達成できなければ達成したメーカーからCO2枠を購入させる制度を導入したり、太陽光パネルを新築住宅に設置することを義務付けたりしている。ちなみに、電気自動車メーカーのテスラは、このCO2枠の売却により収入を得ている。