2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2022年1月19日

 州政府はCO2削減のため再エネ発電設備導入と天然ガス火力の閉鎖も進めている。そんな中、20年8月の熱波来襲時に冷房用電力需要が増加し、日没と同時に太陽光発電からの供給量がなくなり停電してしまった。停電経験後、州政府は停止予定だった天然ガス火力の利用を続けるように電力会社に指示することになった。

世界3位の太陽光設備を備え停電リスクが高い日本

 需要に合わせ発電できない再エネが増えると停電のリスクも生じるが、日本でも12年の固定価格買取制度施行以降、買取価格が有利であった事業用太陽光発電設備量が爆発的に増えた(図‐4)。今、日本の太陽光発電設備は、事業用と家庭用を合わせると、6000万kWを超えており、中国、米国に次ぐ世界3位の規模になった。その分カリフォルニア州のように停電するリスクも高まった。

 東電管内(ただし静岡県東部を除く関東地区のみ)の10kW以上の事業用太陽光発電設備量は、21年6月末時点で、1157万kW。日本の全事業用太陽光設備の23%を占めている。晴天の日、この設備からの発電量は当然1000万kW以上あり、東電のピーク需要時の供給量の4分の1から5分の1に相当する。だが、例えば降雪量が多い日であれば発電量はほぼゼロになり、積雪があれば、その後もパネル上の雪が溶けるまで発電できない。

 寒波で電力需要が高まった時に、再エネ設備が発電できないとなれば発電可能な火力発電設備を保有していないと停電するが、日本ではいざという時に頼ることが可能な火力発電設備が減少している。

自由化しても停電は避けられない

 いまの日本で停電の心配があるのは、台風、大雪などによる自然災害時だろう。11年の東日本大震災では、東北から関東地方にある発電所が津波により被災したため発電量が不足し東電管内では計画停電が実施された。東電管内の静岡県東部の東名高速道路の街灯と表示板が消えたため、山の中を走行しているような状況を筆者も経験した。

 報道番組では、「東電の計画停電の原因は、東電が電力供給を一手に担っていた寡占化のためだ。自由化されていれば停電しなかった」と説明する解説者もいたが、この解説は明らかに間違っている。発電用燃料の石炭、液化天然ガス(LNG)、石油を全て輸入する日本の発電所は外航船を受け入れる必要があり、海岸線に立地せざるを得ない。設備の保有者が誰であれ停電を避けることはできなかった。

 テレビの解説者の意見が通ったわけではないが、16年電力市場は小売りまで含めて自由化された。小売部門を自由化すればコスト競争力のある発電設備が増え、電気料金が下がるという思いが自由化の背景にあるが、自由化は発電設備の増加をもたらしているとは言えない。

 自由化で増えたのは、「新電力」と呼ばれる、大半が発電設備を持たずに卸市場から電気を仕入れて販売する小売事業者ばかりだった。700社以上登録されている「新電力」の中で設備を保有する事業者は数えるほどだ。

設備投資は細り続ける

 需要に合わせ供給を行う必要がある電気という商品では、需要が季節により、また時間により変動するため発電設備ごとの利用率は大きく異なる。価格競争力があり利用率が高い設備は、石炭火力だ。だが今後温暖化問題に取り組む過程で、石炭火力への風当たりが強くなり、長期に操業を行うことが困難になるリスクもある。


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