2024年4月26日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年2月19日

 京都府伊根町では、調理室の見えるランチルーム、自校での調理、地元の水産物の利用、メニューに生産者名を記載、給食当番の児童による献立説明、調理員への感想、地元の農家や畑を訪問など「理想の給食」が実施されている。(『給食の歴史』藤原辰史、岩波新書)

 また、兵庫県宍粟市の学校給食では、地元で捕獲された鹿肉を使った「ジビエ・カレー」が献立にのり、有害鳥獣駆除についての取組みも説明されて、農と食と地域の関係が児童に教育されている。(読売新聞2022年2月9日)

 このようにして、地域と学校が理解しあい、支えあって、地場産の農産物がごく自然に消費され、子どもたちにも地域の歴史、風土、文化が伝わり、継承される。これが理想の形と言える。

 そもそも、地域社会は多様な存在なのだ。これを全国一律のモノサシで測ったり、違いを考慮しない画一的政策・対応をするのは間違っていると考える。したがって、学校給食でも、たとえば、北海道の小麦産地では、学校給食を米飯でなく、地域産の小麦で製造されたパンの方が、地産地消、食文化の面では好ましいことも多い。

国産農産物の地位を正しく上げる

 消費者の期待するものを生産・供給し、消費者に選択された結果が国産農産物の地位を決めるのである。その地位は、海外農産物との関係においても変わらない。

 もちろん、国産の供給体制が確実なものになれば、食料の安全保障度は向上する。しかし、食料安全保障は、わが国の土地資源の制約からして、国内生産だけでは実現できない。食料・農業・農村基本法にも、食料の安定供給は①国内生産、②安定的輸入、③備蓄の組合せとあり、国際的にも、①食料供給の可能性、②入手可能性、③栄養バランス、④供給・入手の安定性のすべてが満たされることとして、この原則が合意されている。

 運動スローガンを強調するあまり、歴史、風土、食文化から誕生し、発展してきた「地産地消」とあえて混同させてはならない。

 したがって、ここで「Buy Japanese!」と声高にいうのではなく、また、外国産のボイコットといったイメージも避けなければならない。地域住民や近隣住民から請われて、支えられ地域農産物が生産供給される。その結果として、物理的な合体・総合計ではなく、いわば『バラエテイを持つBuy Local』の「構成の総和」として国産農産物が買われていくことを強く望むものである。

   
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