2022年7月5日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年2月19日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

欧州で進められる「Farm to Fork」の循環が必須の時代に

 欧州連合(EU)は、気候変動対策と経済成長の両立を図る「グリーン・デイール」戦略を掲げており、農業の分野では、2030年までに全農地の25%を有機農業にするといった目標を掲げている(日本は50年が目標年次)。

 そこで中心となるのが「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」である。生産から消費までのフードシステムを公正で健康的で環境に配慮したものにすることを目指している。描かれている循環は、<持続的生産~持続的流通~持続的消費~フードロスの発生防止>である。

 この戦略で期待されるのは、特に、食の生産・供給と消費の距離を極力近づけること、化石燃料を使って農業資材も産物も長距離を輸送する広域流通から「地域内での循環の重視」である。たとえば、都市周辺の家族農業者が生産したローカルフードを地元のレストランや学校のカフェテラスへ直送する、ファーマーズマーケットで消費者に届ける、肥料も地元のたい肥や食物残渣を活用する、一定の距離を経るものにはトレーサビリテイを義務付づけてその起源(原産地など)が消費者に分かる、といったシステム化で食の循環を実現しようとしている。

 オーストリアでは、すでに有機農業比率が25%(面積)を超えているというのが実情だ。日本貿易振興機構(JETRO)の分析では、長距離輸送を伴う輸入の分野では「環境フットプリント」が求められるようになるから遠距離輸送が成り立たなくなるかもしれないという。一方、産業としての農業の確立と食料安全保障の観点で、EUからの輸出・国際市場では、直接支払いによる価格競争力の維持が続けられていく。

 その他の国々でも、食と環境を巡る動きは、活発になってきている。イタリアなどでスローフードが推奨されて久しいが、米国でも、盛んにローカルフード、ファーマーズマーケット、CSA、学校給食における地産地消(Farm to School)がシェアを広げている。

 このなかで、ローカルフードについては、「Buy Local」という標語があるが、それは「Buy American」とは異なるものとされている(『のびゆく農業(No.1029-1031)ローカルフード』翻訳・解題三石誠司・鷹取泰子)。なお、ローカルフードについて、「固定的な定義はないが、なんとなくの共通点として、大都市周辺の農業地帯における小規模農場にとり、ローカルフードを求める消費者の動きが経営上も大きな影響を与えている。消費者の(農産物への)支払いの意味がわかる(見える)」という要約も見られる。

 Local→Regional→National→Globalとたどってきた農産物の一方通行の流れが、いまや、双方向や循環に向かっている。CSAや全米での9000もの学校で実施されているFarm to Schoolはその典型である。

地域の学校給食から見えるあるべき姿

 日本においても、地産地消との関係で、学校給食の優れた取り組みを進めているので、事例をいくつか見ていく。まず、高知県南国市では、「棚田米」をクラスの電気炊飯器で児童が炊く。JAの全面的な協力を得ながら、米飯給食は週5日、田植え、野菜栽培、食器づくり、郷土食を学ぶ、児童が献立を考えるといった活動を通して食の自立、食文化、食に対する感謝の気持ちを教育している。

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