2024年2月22日(木)

プーチンのロシア

2022年3月1日

 そして、たとえ今、プーチン大統領がキエフの政権を一時的に抑え込んだとしても、その恨みは後に逆流して、クレムリンの主に打撃を与えることになるのではないか。それは東欧諸国での民主運動のうねりと、ソ連崩壊に向かう歴史が雄弁に物語っている。

ロシア国内で起きていた三つの分断

 ロシアでは今、ウクライナ侵攻をめぐって、これまであった社会の「分断」がますます浮き彫りになっている。分断は米国社会でも深刻化しているが、ウクライナ開戦を機に、一枚岩であったはずのロシア社会に綻びの萌芽が見える。

 水と油のように相いれないロシアでの分断には三つのタイプがある。一つ目の境は「ソ連時代を知っているかどうか」だ。91年にソ連邦崩壊後に生まれた世代は、米国と覇を競った栄光の時代を全く知らない。プーチン大統領がいくら大国ロシアの復活を訴えたとしても、ソ連を知らない若者の心には響かない。

 二つ目の分断は「スマホを使いこなし、自由な情報に触れているか否か」だ。ロシアは今、情報統制を強化しており、国営メディアが政権に都合の良い情報ばかりを流し続けている。当然、国営放送のテレビやラジオしか見聞きしていない層は、すっかり政権がコントロールする情報に洗脳されてしまっている。

 三つ目は「今のウクライナを知っているか否か」だ。ウクライナは独立後、政治・社会の混乱が続いたが、自由な空気に触れ、ソ連時代とは全く違った国になった。ロシア語を話し、同じ文化圏であるはずの「きょうだい」たちが実はすっかり違う精神社会で生きているのに、その変化を読み取れていない人たちがロシア国内にいる。

 プーチン大統領はすべてを織り込み済みで、今回のウクライナ侵攻に踏み切ったはずだ。しかし、この三つの分断で自分たちとは異なる層、つまり、「ソ連時代を知らず、政権がコントロールできないネット上の言論空間に触れている人たち」の行動を読み誤ってはいまいか。

 日本で人気のフィギュアスケートのエフゲニア・メドベージェワさんに代表されるようにロシアのスポーツ界からも相次いで反対の声があがっている。ロシアのスポーツ界はプーチン大統領の支持基盤でもあったはずだ。さらに、相手がウクライナであるが故、ソ連人であり、国営メディアしか見ていない人でも、かつての絆や同情心から「戦争をやめて」と訴えている。

 取材すると、今、ロシアでは家族内や友人同士でも今回のウクライナ侵攻に関する意見が食い違っている状況が起きている。ウクライナ侵攻がテーマになると、口論が起き、場合によっては絶交状態に陥ることもあるという。


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