世論の動向が今後の情勢を占う
今後、戦争が長期化し、犠牲者が増えれば、反戦、厭戦機運はさらに広がる可能性はあるだろう。
断言できるのは、2014年クリミア半島併合の時はプーチン支持率が一気に高まったのに、今回、ウクライナ侵攻で国民の支持が同等に得られることはないということだ。それだけロシア人にとってクリミア半島は特別な地域であったという証左だが、ロシア国内の情勢は明らかに8年前と異なっている。
今後、制裁が国民の痛みとなって現れ、プーチン大統領の周辺だけが金儲けできる特異な国内事情への不満と直結すれば、それは反プーチン運動に転化する可能性はあるだろう。ただ、現段階ではそれは一つのシナリオでしかない。国内で政敵を追い出したプーチン政権の支持基盤はまだまだ強固だからだ。
ウクライナの国民はウクライナ語もロシア語も話せる。むしろ、近年はロシア(ソ連)のくびきから外れようとして、ウクライナ語の普及を徹底させていたが、いま、ウクライナ国民はロシアの一般庶民に語り掛けるため、ネット空間を利用して、多くの人たちがロシア語で「戦争をやめてほしい」と訴えている。
制裁強化など国際社会のロシアへの圧力は、ウクライナでの戦闘継続に一定の効果をもたらすだろう。それと同時に、ロシア国内の世論動向やそれを抑え込もうとする治安部隊との押し引きが今後の情勢を占うキーポイントとなるはずだ。
ロシアの国内世論でかすかに起こる変化の兆しが見える。ウクライナ、ロシア両国の怒りのマグマがどこに向かい、プーチン大統領がどう対処するのかという「プーチノロジー」の分析がますます重要になるだろう。