欧州連合(EU)諸国がロシアに支払う天然ガスと原油の輸入代金も急増し、1日当たり1000億円を超えている。3月2日には、天然ガス代金だけで過去最高の6億8900万ユーロ(900億円)に達した。
ロシアの企業、個人に制裁を科しながら、巨額の戦費を渡しているようなものだが、ドイツのハーベック副首相兼経済・気候保護相(緑の党)は「ロシアからの化石燃料輸入の中止は、3カ月とかで出来ることではない。中止すれば社会不安を招く」としてロシアへの支払いを続けることは仕方がないとしている。
ドイツは、脱石炭・脱原発を続ける過程でロシアへのエネルギー依存度が高まったが、昨年末には3基の原発を停止し、今年末までには最後の3基の停止により脱原発を実現する計画だ。原発を利用すればロシアからの化石燃料の輸入量も削減できるはずだが、未だに脱原発計画中止の発表はなく、脱原発の中止については、ハーベック副首相は否定的だ。
EU内では国によりロシア依存度が大きく異なるため、ロシアからの化石燃料の輸入禁止についても意見も分かれる(「露SWIFT排除を決めたドイツに脱原発はできるのか」 )。ロシアに天然ガス需要量の半分以上を依存するドイツ、40%依存のイタリアなどが禁止に踏み切ることは難しい。ブルガリア首相は、天然ガス、原油共にロシア依存度が高いために、EUが輸入禁止に踏み切る場合にはブルガリアは参加できないと示唆している。
そんな中でも、欧州委員会はロシアからの天然ガスを年末までに3分の2削減可能とし、依存度を下げる策を実行すると発表した。国際エネルギー機関(IEA)は、3月に入り10の具体的なロシア依存度削減策を発表した。欧州委員会も同様の方策を取ることになる。
ロシア依存度を低減させる10の方策
IEAによると、21年にEUがロシアから輸入した天然ガスはパイプライン経由で1400億立法メートル(140bcm-billion cubic meters)、LNGの形で15bcm。EU消費量の約40%を占めている。
依存度低減のため、IEAは10の提言を行っている。その中には、今年末までに終了するガスプロムとの契約、15bcmの更新を行わないこと。さらに、10年以内に終了する40bcmの契約更新も見送る案がある。