Wedge SPECIAL REPORT

2022年4月29日

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佐藤卓己 (さとう・たくみ)

京都大学大学院教育学研究科教授

京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、国際日本文化研究センター助教授などを経て、2015年から現職。20年、紫綬褒章受章。『流言のメディア史』(岩波新書)など著書多数。
 

 「Wedge」2022年5月号に掲載され、好評を博している特集「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
 

 ロシア軍が今年2月24日に開始したウクライナへの侵攻は、最終的にどのような結末を迎えるのか。誰もいま確信をもって語ることはできないだろう。筆者は戦場となった場所から「ウクライナ戦争」と呼ぶが、本稿執筆時点の3月末でも正式な戦争の名称さえ確定していない。

 そもそもロシア政府は国内報道で「戦争」や「侵攻」の表現を禁じ、「特別軍事作戦」であるとの公式見解を繰り返している。これに従えば、日本語では「ウクライナ事変」と呼ぶべきだろうか。事変とは「警察力では抑えきれず、軍隊の出動を必要とする程に拡大した騒乱」であり、「宣戦布告なしに行われる国家間の戦闘行為」である。日本でも大東亜戦争開始までの日中戦争(1937~41年)が「支那事変」と呼ばれていた。

 「ウクライナ事変」と表記すると、なぜ国際的経済制裁にもかかわらずロシア国内で愛国熱が高まり、国際的孤立の中で「正義の戦争」が支持されるのか、その理由も分かりやすい。経済制裁も国際的孤立も日本人が「支那事変」後に経験したことだからである。

 その事変が第二次世界大戦につながったように、「ウクライナ事変」が第三次世界大戦に発展しないという保障はない。その不安から人々が戦争情報を求めるのは当然である。しかし、私たちは本当に戦場の「真実」を知りたいと思ってメディアに接しているだろうか。

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