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2022年5月26日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 品川編の白眉は、新幹線の線路下で掘削が進められている、巨大な空間である。JR東海が約7兆円を投じて、建設中のリニア中央新幹線の品川駅である。

 私事であるが、筆者は先日、約20年ぶりに山梨県にあるリニア実験線での試乗会に参加することができた。超電導リニアがすでに、営業を前提として車内の内装の検討などをしていることに驚いた。時速500キロメートルを超える走行は、前回も経験済みだったから、車両がまさにすぐにでも営業ができるような完成形に近かったのである。

 中央新幹線は、東京-大阪間を67分、東京-名古屋間を40分で結ぶ。「マチノミクス」は、首都圏と中京圏、関西圏が一体となることによって、その経済規模はフランスと韓国を抜く、という。

 街のなかで、なにげなく見ている風景、見過ごしている風景のなかに、「経済」を見つける知的好奇心をかきたてるところが、制作者の腕のよさをうかがわせる。

渋谷の路地ならではの再開発

 渋谷編では、「ドン・キホーテ」が手掛ける、再開発が驚かせる。渋谷は筆者が記者時代からなじんだ街である。流通業界を担当した経験から、百貨店のエレベーターやエスカレーターの位置はいまでも忘れない。その懐かしい、東急百貨店本店が来年1月から取り壊されて改築されるという。

 「ドンキ」の再開発地は、その本店の真ん前にある。道玄坂に面した、かつての店舗から再開発は想像もできない。「マチノミクス」は、「ドンキ」が店舗の裏側にタコ足のようにもみえる、変則的な土地約1700坪を購入したことを明らかにする。

 再開発の中心には、ホテルが建設される。その周りにも商業施設などができる。この再開発の特徴は、出入り口が四方八方にあることである。渋谷は坂の町で路地が多い。その雰囲気を再開に生かそうというのである。

 渋谷といえば、東急の本拠地であり、その牙城にパルコや西武百貨店・渋谷店が戦いを挑んでいる流通激戦区である。

 渋谷駅から区役所に抜ける道は「公園通り」と呼ばれる。「マチノミクス」では、この公園が「代々木公園」ではないことを明らかにする。

 筆者は僭越ながら、そのわけを知っている。パルコの実質的な創業者である、故・増田通二さんが部下の若者たちに自由な発想で、それまでどこにもない流通の形態を創造したことにある。「パルコ」は、イタリア語で「公園」なのである。公園通りは、パルコに向かう道である。路地の多い周辺に、パルコは「スペイン坂」の名称までつけてみせた。

 パルコ劇場、現代美術……パルコが渋谷にもたらした若者文化のプロデューサーだった、増田さんについて、番組では語られなかったのは、増田さんといささか交流があった筆者にとっては残念だった。しかし、パルコの経済的な意義は、しっかりと抑えていた。

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